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2021年8月16日
全世代対応型の社会保障制度の構築に向けて所要の改正
第204回国会(令和3年常会)では「全世代型社会保障改革の方針について」(令和2年12月15日閣議決定)等を踏まえ、これまでの社会保障構造の見直しについて審議され、全ての世代で広く安心を享受できる「全世代対応型の社会保障制度」の構築に向けて、所要の改正が行われることが決定しました。
今回は健康保険法や育児・介護休業法など、労務管理に関わる法律の改正に着目し、その概要について確認していきます。
1.傷病手当金の支給期間の通算化【健康保険法、船員保険法】
傷病手当金は、健康保険の被保険者が業務外の事由による療養のため、その労務に服することが出来なくなった日から起算して3日を経過した日から労務に服することのできない期間、手当金が支給される制度です。
現行では、支給期間は支給開始日から起算して1年6ヶ月を超えない期間とされており、その間一時的に就労した場合、その就労期間も1年6ヶ月の計算に含まれます。(支給開始日から1年6ヶ月後に同じ疾病が生じて労務に服することが出来なくなった場合は不支給となってしまいます。)仕事と治療の両立の観点から、より柔軟な所得補償を行うことが可能となるよう、改正により、令和4年1月以降、出勤に伴い不支給となった期間がある場合でも、支給期間の通算が可能となり、支給期間を通算して1年6ヶ月の期間まで支給されるようになります。(延長される期限に限度が無くなります。)
2.「男性育休」の取得を促進する改正育児・介護休業法が成立【育児・介護休業法】
今国会で提案された、改正育児・介護休業法案が、6月3日衆議院本会議で可決、成立しました。男性の育児休業の取得を促進する内容となっており、施行に向けて就業規則(育児・介護休業規程等)の修正や、社内の意識改革が必要となります。
①子の出生直後の時期における柔軟な育児休業の枠組みの創設
男性が柔軟に育児休業を取得できるよう、産後8週間を対象とした「出生時育休」(最大4週間、2分割での取得も可能)の制度が新たに設けられます。2週間前までに申請すれば取得可能で、労使協定を締結すれば、事業主と従業員の個別合意により、事前に調整した上で休業中に就業することも可能となります。(施行日未定、令和4年秋頃から)
②申出をした労働者への個別の周知・意向確認の措置の義務付け
事業主に対して、妊娠や出産を申し出た従業員(男女問わず)に育休制度について周知をすることや、従業員に取得の意向について確認することが義務付けられます。(令和4年4月1日から)
③育児休業の分割取得
男女問わず、子が1歳になるまでに育児休業を2回に分割して取得できるようになります。要件を満たせば、1歳以降もさらに分割取得が可能となり、上記①の「出生時育休」と併用すれば、男性は子が1歳になるまでに、分割して計4回の育児休業を取得できるようになります。(施行日未定、令和4年秋頃から)
④育児休業の取得の状況の公表の義務付け
常時雇用する労働者数が1,000人超の事業主に対し、育児休業の取得状況について毎年公表することが義務付けられます。(令和5年4月1日から)
⑤有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和
有期雇用労働者の育児・介護休業の取得要件のうち「事業主に引き続き雇用された期間が1年以上である者」という要件が男女ともに廃止されます。(ただし、労使協定を締結した場合に対象外とすることは、引き続き可能です。)(令和4年4月から)。
3.育児休業中の保険料の免除要件の見直し【健康保険法、船員保険法、厚生年金保険法 等】
短期の育児休業の取得に対応して、1月内に2週間以上の育児休業を取得した場合、当該月の保険料が全額免除されるようになります。賞与に係る保険料については、1月を超える育児休業をしている場合に限り、全額免除の対象となります。(令和4年10月から)
育児・介護休業法の①及び③の改正を踏まえ、雇用保険法の育児休業給付についても、所要の規定が整備されます。また、出産日のタイミングによって、受給要件を満たさなくなるケースを解消するため、被保険者期間の計算の起算点に関しても特例を設けることとされています。

社会保険労務士法人ユアサイド
工藤 あさみ(くどう あさみ)
早稲田大学 第二文学部卒業後、平成27年社会保険労務士法人ユアサイド入職。平成29年社労士試験合格、登録。派遣会社での労務管理経験を活かし、労務相談等を行う。「親しみのある社労士」を目指して日々邁進中。