HuApp MEDIA HR業界のお役立ち情報を発信中 キャリアアップ助成金の利用で派遣先正規雇用を~派遣労働者の正規雇用に上乗せ+特例あり~

2022年6月15日

キャリアアップ助成金の利用で派遣先正規雇用を~派遣労働者の正規雇用に上乗せ+特例あり~

新年度となり、各助成金の要件や助成額等が新しく決定されています。

今回は、引き続き派遣労働者の正規雇用化についてコロナ特例が設定された「キャリアアップ助成金(正社員化コース)」をご案内します。

 

1.派遣先での正規雇用で助成金額を上乗せ

この助成金は、労働者の安定的な雇用につながる処遇改善を目的としているため、

派遣労働者を派遣先において正規雇用(直接雇用)とした場合も対象となります。

助成金額は、原則の額に「派遣先での正規雇用」として285,000円が上乗せ、下記となります。

 

  • 有期雇用派遣労働者 → 派遣先において正規雇用社員として直接雇用

: 一人当たり 中小企業85万5,000円 ( 大企業71万2,500円 )

  • 無期雇用派遣労働者 →派遣先において正規雇用社員として直接雇用

: 一人当たり 中小企業57万円 ( 大企業49万8,750円 )

 

対象となる派遣労働者は、原則としてその事業所での就業が6ヶ月以上の派遣労働者・紹介予定派遣労働者のため、ミスマッチを防ぎ、能力や人柄を見極めてから正規雇用としたい、というご希望の派遣先事業所には、直接雇用にあたり通常の人材紹介では発生しない助成が得られ、紹介手数料の負担について軽減されるメリットがあるといえます。

 

2.紹介予定派遣にコロナ特例(派遣先就業期間の短縮)

前段のとおり、原則として助成対象となる派遣労働者、紹介予定派遣労働者は派遣先就業6ヶ月以上の方が対象となりますが、現在、令和7年3月までの期間中に派遣先において正規雇用転換を行う場合にはコロナ特例による期間短縮が適用されます。

 

  • 派遣就業期間の短縮要件

①紹介予定派遣により就業している方

②これまで就労経験のない職業に就くことを希望する方

※在学中のパート・アルバイト職種は除かれます。

 

上記要件のいずれにも該当する方は、派遣期間が2カ月以上6ヶ月未満時点の転換でも、助成金の受給対象となります。職種未経験者の方の紹介予定派遣を歓迎される派遣先事業所には、早期の人材確保に活用していただきたい特例です。

 

3.10月1日より受給要件が追加

本助成金の受給には、計画届出の作成届出の認定や就業規則への転換制度の定め、正規雇用転換後の3%賃金ベースアップなどの各要件がありますが、本年10月1日以降の転換には、一部要件(定義)変更がなされる予定です。

 

①転換後「正規雇用労働者」の定義

同一事業所内の正規雇用者に適用される就業規則が適用され、「賞与または退職金の制度」かつ「昇給」が適用されている者に限る

 

★「正規雇用労働者に適用される就業規則」要件記載のポイント

賞与または退職金の支給、昇給の実施がなされることが原則であること

が明確にわかるよう、それぞれ支給・実施時期や金額の計算・支払方法等、

できるだけ具体的な取扱いの規定明示が望まれます。

×「賞与は、業績により支給する」

×「会社が必要と判断した場合には、賃金の昇降給その他改定を行う」

※賃金改定(降給・据置)の可能性については、それ自体をもって不支給とはなりませんが、客観的な決定基準や事由の記載が求められます。

 

②対象となる「転換対象労働者」の定義

賃金の額または計算方法が「正規雇用労働者と異なる雇用区分の就業規則等」

の適用を6ヶ月以上受けて雇用している有期または無期労働者

 

★「正規雇用労働者と異なる雇用区分の就業規則」とは?

基本給、賞与、退職金、各種手当等、いずれか一つ以上について正規雇用労働者と異なる制度が明確に規定されている必要があります。

また転換前「有期雇用労働者」とされるためには、規則上、単に有期契約であるという記載ではなく、契約期間の記載が求められます。

〇「契約社員の雇用契約期間は、1年とする

 

派遣労働者以外の同社内での正規雇用化についてはそれぞれ、①と②に求められる要件、定義をクリアにした規則整備をしておく必要があります。

派遣労働者の転換については、もともと派遣元の就業規則を適用されているため②の定義は該当の必要がありません。転換後に適用される派遣先事業所の「正規雇用者の就業規則」において①の制度がどのように規定されているか、確認してもらいましょう。

 

最後に、本助成金の受給においては、転換の手続き、手順と賃金支払いにつき、就業規則の制度に基づいて行われていることが重要となります。

派遣先事業所にて助成金のご案内をされる際には、手順をご確認いただき、余裕をもって計画届の認定、就業規則の見直しを行うよう合わせてアドバイスをお願いします。

 

 

 

社会保険労務士法人ユアサイド

綿引 文生(わたびき ふみお)

早稲田大学政治経済学部経済学科卒業後、平成19年に社会保険労務士試験に合格。平成21年社会保険労務士法人ユアサイドに入社。令和3年11月パートナー社員就任。派遣会社を含む幅広い業種の企業をこれまでに100社以上担当。人の強みを生かす企業経営の一助となるとの想いで、日々労務相談や手続きに対応している。

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