HuApp MEDIA HR業界のお役立ち情報を発信中 労働時間になる研修時間、ならない研修時間。違いはどこか?

2020年8月13日

労働時間になる研修時間、ならない研修時間。違いはどこか?

 労働基準法の改正によって、中小企業では2020年4月から「時間外労働の上限規制」が適用されます。(大企業は2019年4月から適用)これに伴い、労働基準監督署へ「この研修時間は労働時間に該当するのか?」という相談が多いようです。そのような相談事例をまとめたリーフレットを厚生労働省は発表しています。

 

そもそも労働時間とは?

 

 そもそも労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間のことをいいます。使用者の明示または黙示の指示により 労働者が業務に従事する時間は 、労働時間に該当します。

 

 「〇〇業務をしてください」と明示的に仕事を指示する場合、その時間は労働時間に該当します。また所定労働時間中に終わらないような仕事量を割り振り、それに対して労働者が終業時刻以降も仕事をしていることを黙認している場合も、労働時間に該当します。

 

研修は労働時間に該当するか?

 

 研修が労働時間に該当する否かは参加が強制されている否かによって決まります。研修への参加が強制されている場合、労働時間に該当します。参加が強制されていない場合、労働時間に該当しません。

【労働時間に該当しない事例】

①終業後の夜間に行うため、弁当の提供はしているものの、参加の強制はせず、また、参加しないことについて不利益な取扱いもしない勉強会。

②労働者が、会社の設備を無償で使用することの許可をとった上で 、自ら申し出て 、一人でまたは先輩社員に依頼し、使用者からの指揮命令を受けることなく勤務時間外に行う訓練。

 

【労働時間に該当する事例】

①使用者が指定する社外研修について、休日に参加するよう指示され、後日レポートの提出も課されるなど、実質的な業務指示で参加する研修 。

②自らが担当する業務について、あらかじめ先輩社員がその業務に従事しているところを見学しなければ実際の業務に就くことができないとされている場合の業務見学 。

 

 ご注目いただきたいのは「見学しなければ実際の業務に就くことができない業務見学」です。明示的に参加を強制していませんが、業務見学に参加しないと実際の業務につくことができなければ、事実上強制しているため、労働時間に該当します。 労働者派遣事業の場合、派遣法の定めによって1年間に8時間以上の有給無償の教育訓練を行う必要があります。この有給無償の教育訓練は労働時間に該当します。 派遣元によっては、派遣労働者のキャリア形成をサポートすることを目的として善意で無給無償の教育訓練を用意しているケースもあるようです。善意であっても、その教育訓練への参加を強制している場合、労働時間に該当するのでご注意ください。

社会保険労務士法人ユアサイド

工藤 あさみ(くどう あさみ)

早稲田大学 第二文学部卒業後、平成27年社会保険労務士法人ユアサイド入職。平成29年社労士試験合格、登録。派遣会社での労務管理経験を活かし、労務相談等を行う。「親しみのある社労士」を目指して日々邁進中。

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