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2021年6月30日

テレワークガイドラインの改正に伴う労働時間の管理について

 

令和3年3月25日、厚生労働省より「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」が公表されました。テレワークは、通勤が不要になり人との接触も最低限にできるため新型コロナウイルス等の感染症のリスクを軽減できますが、一方で、労働者の労働時間や稼働状況が把握しづらくなるため、労働時間の管理については、情報通信技術を活用して行う方法等によって、労務管理を円滑に行うなど、労働時間の管理に工夫が必要となります。今回は、労働時間の管理と、その具体例について確認していきます。

 

テレワークにおける労働時間の把握方法

 

① 客観的な記録により把握する方法

パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として、始業及び終業の時刻を確認する。(テレワークに使用する情報通信機器の使用時間の記録等や、サテライトオフィスへの入退場の記録等により労働時間を把握)

② 労働者の自己申告による把握する方法

1日の終業時に、始業時刻及び終業時刻をメール等により報告させる。

※労働時間の自己申告に当たっての注意点

①自己申告制の適正な運用等について、十分な説明を行うこと。

②パソコンの使用状況など客観的な事実と自己申告された始業・終業時刻との間に著しい乖離がある場合には所定の労働時間の補正をすること。

③労働者による労働時間の適正申告を阻害する措置を講じないこと。

 

中抜け時間

 

テレワークに際しては、一定程度労働者が業務から離れる時間が生じることが考えられるが、労働基準法上、使用者は把握することとしても、把握せずに始業及び終業の時刻のみを把握することとしても、いずれでもよい。

中抜け時間の取扱いの方法

① 中抜け時間を把握する場合

休憩時間として取り扱い終業時刻を繰り下げたり、時間単位の年次有給休暇として取り扱う。(例:一日の終業時に、労働者から報告させる。)

② 中抜け時間を把握しない場合

始業及び終業の時刻の間の時間について、休憩時間を除き労働時間として取り扱う。

 

勤務時間の一部についてテレワークを行う際の移動時間

 

勤務時間の一部についてテレワークを行う場合の就業場所間の移動時間について、労働者による自由利用が保障されている時間については、休憩時間として取り扱うことが考えられる。一方で、テレワーク中の労働者に対して、使用者が具体的な業務のために急きょオフィスへの出勤を求めた場合など、使用者が労働者に対し業務に従事するために必要な就業場所間の移動を命じ、その間の自由利用が保障されていない場合の移動時間は、労働時間に該当する。

 

長時間労働対策

 

テレワークについては、業務の効率化に伴い、時間外労働の削減につながるというメリットが期待される一方で、労働者が使用者と離れた場所で勤務をするため、使用者の管理の程度が弱くなる等のおそれがあり、長時間労働による健康障害防止を図ることや、労働者のワークライフバランスの確保に配慮することが求められる。

長時間労働等を防ぐ方法

① メール送付の抑制等

電話等での方法によるものも含め、時間外等における業務の指示や報告の在り方について、各事業場の実情に応じ、ルールを設ける。

② システムへのアクセス制限

外部のパソコン等から所定外深夜・休日は事前に許可を得ない限りアクセスできないよう使用者が設定する。

③ 時間外・休日・所定外深夜労働についての手続き

労使の合意により、時間外等の労働が可能な時間帯や時間数をあらかじめ使用者が設定する。また、労使双方において、時間外等の労働を行う場合の手続等を就業規則等に明記しておくことや、テレワークを行う労働者に対して、書面等により明示しておく。

④ 長時間労働等を行う労働者への注意喚起

管理者が労働時間の記録を踏まえて行う方法や、労務管理システムを活用して対象者に自動で警告を表示する。

⑤ 勤務間インターバル制度の利用

厚生労働省ではテレワークについて、ウィズコロナ・ポストコロナの「新たな日常」、「新しい生活様式」に対応した働き方であると同時に、働く時間や場所を柔軟に活用することのできる働き方であり、働き方改革の推進の観点からも、その導入・定着を図ることが重要であるとしています。今回の改正では、新型コロナウイルスの流行やそれに伴う緊急事態宣言などの影響により、テレワークを導入する企業が増えていることを踏まえ、より円滑にテレワークを実施し、長期的に定着しやすくなるような内容になっています。ただし、導入・実施に当たってはあらかじめ労使で十分に話し合い、就業規則等に規定しておくなどルールを定めることが重要です。

 

 

 

社会保険労務士法人ユアサイド

工藤 あさみ(くどう あさみ)

早稲田大学 第二文学部卒業後、平成27年社会保険労務士法人ユアサイド入職。平成29年社労士試験合格、登録。派遣会社での労務管理経験を活かし、労務相談等を行う。「親しみのある社労士」を目指して日々邁進中。

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