HuApp MEDIA HR業界のお役立ち情報を発信中 短時間労働者の社会保険・税金の扶養範囲について

2022年10月25日

短時間労働者の社会保険・税金の扶養範囲について

令和4年10月より最低賃金が全国平均で31円の引上げとなりました。これにより、社会保険上の扶養や税法上の扶養の範囲内で働きたいと考える短時間労働者の方については、今後の働き方が大きく変わるケースもあるかと思います。今回は、10月から改正された社会保険の加入要件とあわせて、税制上の扶養の範囲内について確認していきます。

 

・社会保険の法改正の概要(表1)

2022年9月30日まで 2022年10月1日から 2024年10月1日から
企業規模 常時500人超 常時100人超 常時50人超
労働時間 週所定20時間以上 週所定20時間以上 週所定20時間以上
賃金 月額88,000円以上 月額88,000円以上 月額88,000円以上
雇用期間 継続して1年以上
使用される見込み
継続して2か月以上
使用される見込み
継続して2か月以上
使用される見込み
適用除外 学生 学生 学生

勤務先の企業規模によっては、1年以内の臨時的雇用であっても、2か月を超える場合には社会保険に加入する必要が出てくるため、事業主は、新たな加入対象者の把握を行うことが大切です。

 

・社会保険上の扶養要件

社会保険上の扶養となる「壁」については、収入130万円の壁が存在します。

社会保険の扶養要件の「収入条件」として、原則、収入が130万円未満(60歳以上である場合または障害厚生年金を受けられる程度の障害を有する者である場合には、収入が180万円未満)かつ、

・同居の場合:収入が扶養者(被保険者)の収入の半分未満

・別居の場合:収入が扶養者(被保険者)からの仕送り額未満

で、あることが要件となります。収入とは、過去における収入ではなく、扶養に該当する時点および、認定された日以降の年間の見込みの収入額のことをいい、給与所得等の収入が月額108,333円を超える場合には、扶養の範囲から外れることとなります。

ただし、表1のとおり、雇用期間が2か月以上の見込みがあり、月額が88,000円以上(収入約106万円)の場合には、収入が130万円未満であっても社会保険の加入が必要となります。

 

・税制上の扶養の範囲

税金の扶養控除の範囲には、年間収入の額によって、いくつかの「壁」が存在します。

なお、「収入」とは、給与など入ってきたそのままの金額を収入といい、「所得」とは、経費や所得控除を引いて残る金額のことをいいます。

①収入103万円の壁

103万円の壁は、所得税の支払い義務がかかり始める年間収入を指します。

②収入150万円の壁

150万円を超えると「配偶者特別控除」の額が、収入により徐々に減っていきます。これは、短時間労働者の収入が150万以下(かつ配偶者の所得が900万円以下)の場合には、配偶者特別控除の満額(38万円)を受けることができますが、150万円を超える場合には、段階的に配偶者特別控除の額が減額されます。

③収入201万円の壁

上記、②で述べたように、150万円の壁を超えても、収入が201万円以下であれば「配偶者特別控除」を受けることができますが、201万円を超えると控除額はゼロとなります。なお、配偶者特別控除の額は、短時間労働者の配偶者(納税者)の収入によって変動しますので、注意が必要です。

 

・まとめ

短時間労働者の収入 社会保険上の扶養 税制上の扶養
103万円 短時間労働者の所得税がかからない上限額。配偶者が「配偶者控除(38万円)」を受けることができる。
106万円 企業規模、労働時間、賃金、雇用期間等の条件を満たす場合には、勤務先での社会保険に加入する必要あり(表1)。
130万円 130万を超えると配偶者の扶養を外れ、勤務先での社会保険や国民健康保険の加入が必要となる。
150万円 150万以下は配偶者が「配偶者特別控除」を満額受けることができ、150万円超の場合には収入により段階的に控除額が減額される(配偶者の収入要件あり)。
201万円 配偶者が「配偶者特別控除」を受けることができる上限。

 

社会保険への加入については、労働者側のメリット(厚生年金加入による年金制度の充実や健康保険加入による医療保険の充実)もありますが、様々な理由により加入を避けたい場合には、労働時間数を減らすなど、これまでの雇用契約を見直す必要が出てきます。要件に該当する短時間労働者がいる場合には、説明会・面談等の実施により法改正の内容が確実に伝わるよう社内の通知に努めてください。

 

 

 

社会保険労務士法人ユアサイド

綿引 文生(わたびき ふみお)

早稲田大学政治経済学部経済学科卒業後、平成19年に社会保険労務士試験に合格。平成21年社会保険労務士法人ユアサイドに入社。令和3年11月パートナー社員就任。派遣会社を含む幅広い業種の企業をこれまでに100社以上担当。人の強みを生かす企業経営の一助となるとの想いで、日々労務相談や手続きに対応している。

記事一覧へ