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2022年11月10日

11月は「過労死等防止啓発月間」です。

11月は「過労死等防止啓発月間」過重労働解消キャンペーンが実施されます。

 

労働時間の上限規制、事業主の適正な労働時間の把握義務等、過重労働への対応が厳しく求められている昨今ですが、現状として、いまだ恒常的な長時間労働の実態や、長時間労働に関連すると考えれる脳・心臓疾患、精神障害について多くの労災申請が認められています。2019年の調査では、長時間労働について週40時間が法定労働時間であるところ、週60時間時間以上の勤務を行っている労働者の割合が6.4%(国の目標は2020年までに5%以下)、労災認定件数については700件を超えていました。

 

低下傾向にあるとはいえ引き続き高水準で推移する上記の現状を背景に、厚生労働省では毎年11月を「過労死等防止啓発月間」と定めています。過労死等(※)をなくし、労働者の健康とワークライフバランスを保つことを目的として、シンポジウムの開催等の啓発や相談窓口の設置、事業所への重点的な監督等、様々な取り組みが行われます。

 

※過労死等
業務における過重負荷による脳血管・心臓疾患を原因とする死亡、または業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺、精神障害、脳血管・心臓疾患等と定義されています。

 

<事業所の重点監督>

過重労働による労災請求が行われた事業所や、労働基準監督署やハローワークに寄せられた相談内容により問題があると判断される事業所が対象とされており、重点的に確認される事項に以下が挙げられています。監督指導の結果、重大・悪質な違反が認められた場合には送検、公表されます。

①時間外労働が「時間外・休日労働に関する協定届」の範囲内であるか
②未払い賃金が発生していないか
③適正な時間管理を行っているか
④長時間労働者に対し、健康確保措置が講じられているか

重点監督の対象事業所とならなくとも、上記は通常の監督指導においても多く指摘される点です。事業所として問題がないか、この期間に改めて確認してみましょう。

 

<過労死防止・過重労働解消にむけて事業主が取り組むべきこと>

①労働時間の正確な把握と解消への努力

過労死に繋がる業務上の負荷は、長時間の労働による「身体的な疲労の蓄積」「心理的な疲弊」に二分されています。業種や職種、年齢や人物の耐性によりもちろん差異はありますが、医学的な観点から、時間外・休日労働協定の原則上限である月45時間を超え、労働時間が長くなればなるほど業務と傷病発生との関連性が強まるという知見が得られています。

労使協定の時間外労働にかかる上限規制は根拠のないものではなく、その知見をもとに定められているのです。まずは「時間外・休日労働協定」の内容を正しく周知して労働者に認識させること、事業所として労働時間を正確に把握することが第一です。時間管理の対象とならず、知らぬ間に長時間労働になりがちな管理・監督者や裁量労働制の適用者についても健康確保の責務から労働時間の把握が必要ですので、注意してください。

労働時間を正確に把握したうえで実際に労使協定以上の長時間労働が発生している場合には、なぜ発生しているのか、精神的に過重な負荷を感じている労働者がいないか、事業所ごとに問題を認識し、解消する努力を続けていくことが大切です。

 

②職場環境・制度の整備

・長時間労働者へ面接指導推奨の徹底(義務)
対象者への速やかな通達、勤務中に面接を可能とする勤務対応等を整備

・ストレスチェックの実施(50人未満の事業場は努力義務)
ストレス程度をチェック、高ストレス者について医師による面接指導を行う

・有給休暇の計画的付与の実施
有給休暇を消化しやすい環境をつくり、計画的な取得に努める

・勤務間インターバル制度の導入
生活時間の確保のため、勤務の終業から始業時刻まで一定の休息時間を設ける

・労働者への教育
自らの健康状態を整え、不調に気づくようセルフケアの重要性について教育

 

具体的な対応として例を挙げましたが、大切なことは、事業主が長時間労働を推奨しないという姿勢を明確にし、職場環境においてその姿勢を徹底させることです。不安なく相談ができる、対応をスムーズに行う環境がなければ、どの取り組みも実態的な効力はありません。まずは事業主のから管理職に認識を一致させ、事業所に応じた有効な対策を講じていきましょう。

 

 

 

社会保険労務士法人ユアサイド

綿引 文生(わたびき ふみお)

早稲田大学政治経済学部経済学科卒業後、平成19年に社会保険労務士試験に合格。平成21年社会保険労務士法人ユアサイドに入社。令和3年11月パートナー社員就任。派遣会社を含む幅広い業種の企業をこれまでに100社以上担当。人の強みを生かす企業経営の一助となるとの想いで、日々労務相談や手続きに対応している。

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