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2023年6月15日

65歳超継続雇用推進助成金とは

人材確保が困難となっている昨今、高年齢者の雇用環境を整備し、その労働力を積極活用することも労働力確保の一つの選択肢となっていると考えられます。

そこで、今回は高年齢者の雇用環境整備をする場合に活用できる「65歳超継続雇用推進助成金」についてご紹介します。

 

1.65歳超継続雇用推進助成金とは?

本助成金は、次の3つのコースから成る助成金です。
すべてのコースに共通して、対象となる労働者(雇保被保険者)が最低1名いることが必要です。

1)65歳超継続雇用推進コース(以下「定年引上げ等コース」といいます)
65歳以上への定年または雇用継続雇用上限年齢の引上げ、または定年廃止、他社での継続雇用制度の導入。

2)高年齢者評価制度等雇用管理改善コース
賃金・人事処遇制度、短時間勤務や隔日勤務制度、高齢者向け専門職または適切な役割を付与する制度などの導入。

3)高年齢者無期雇用転換コース
50歳以上で定年年齢未満の有期契約労働者を無期転換させる。

 

2.支給額

生産性要件が2023年度から廃止されました。

1)定年引上げ等コースについては、定年なのか継続雇用(自社・他社)なのか、引き上げ幅がどの程度なのか、対象人数が何人いるかで最低10万円~最高160万円の間で助成額が変わります。定年引上げ等コースでの支給額の例を挙げると、定年5歳以上引上げ、または定年・雇用継続上限年齢を70歳以上とする取組で、対象1~3人が30万円、4~6人が50万円です。

2)高年齢者評価制度等雇用管理改善コースは、専門家への相談料や機器導入等に要した経費(上限50万円)の60%(大企業45%)となっていますが、初回のみ経費額を50万円とみなすとしていますので、初回は事実上30万円(大企業22.5万円)と考えてよいでしょう。

3)高年齢者無期雇用転換コースは、対象労働者一人当たり48万円で、1年度当たり10名までとなっています。

 

3.本助成金のポイント

1)定年引上げ等コースでは、選択定年制を採用することも可能です。採用する場合は選択肢となる最も高い年齢を引き上げる必要があります。

2)定年引上げ等コースでは、就業場所、職務内容や雇用区分により定年年齢等に差を設けても構いません。ただし、設定されている一番低い年齢を引き上げる必要があります。ただし、元々設定されていた定年年齢等を引き下げる改定(新たに定年を設定することを含みます)を行うと助成対象になりません。助成金の支給事務を行う高齢・障害・求職者雇用支援機構のパンフレットに詳細なNG例がありますので、定年等に差を設けたうえで助成金を活用しようとする場合は、よく確認して制度設計をしてください。

3)高年齢者無期雇用転換コースは、キャリアアップ助成金(正社員化)との併給ができません。どちらも要件を満たしていて助成金申請をしようとする場合は、どちらかを選択する必要があります(キャリアアップ助成金の正社員化コースのほうが助成額は大きい)

4)高年齢者評価制度等雇用管理改善コース、高年齢者無期雇用転換コースは、計画申請が必要です(計画開始3ヶ月前まで。定年引上げ等コースは計画申請不要)。

5)定年引上げ等コース、高年齢者無期雇用転換コースは、高年齢者雇用管理措置の実施が必要です。具体的には高年齢者雇用等推進者の選任と、生活習慣病健診その他労働時間弾力化や賃金体系見直し等の雇用管理に関する措置の1つ以上の実施です。なお、高年齢者評価制度等雇用管理改善コースは、それ自体が雇用管理制度に関するものであるため、その実施を行うという形となっています。

6)定年引上げ等コース、高年齢者評価制度等雇用管理改善コースは、実施に当たり社会保険労務士等の専門家への相談等、機器導入等の経費が発生している必要があります(高年齢者無期雇用転換コースは不要)。

 

4.おわりに

定年の引き上げ等は、人事制度の大きな変更と言えます。自社の置かれている状況を分析し、講ずべき措置をよく検討することも重要です。そのうえで、上記ポイント等を参考にして、使途自由・返済不要な助成金の上手な活用を行っていただければ幸いです。

 

 

 

社会保険労務士法人ユアサイド

綿引 文生(わたびき ふみお)

早稲田大学政治経済学部経済学科卒業後、平成19年に社会保険労務士試験に合格。平成21年社会保険労務士法人ユアサイドに入社。令和3年11月パートナー社員就任。派遣会社を含む幅広い業種の企業をこれまでに100社以上担当。人の強みを生かす企業経営の一助となるとの想いで、日々労務相談や手続きに対応している。

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