HuApp MEDIA HR業界のお役立ち情報を発信中 労働者死傷病報告の作成・ポイントについて

2023年9月22日

労働者死傷病報告の作成・ポイントについて

労働災害が発生した際は、被災状況を確認し、被災労働者が休業または死亡した場合には労働基準監督署へ「労働者死傷病報告」を提出しなければなりません。特に被災労働者が派遣労働者であった場合、派遣元・派遣先双方ともに提出が必要とされています。今回は派遣労働者が被災した場合の「労働者死傷病報告」についての作成・提出のポイント等を中心に解説します。

 

≪「労働者死傷病報告」とは≫

はじめに、労働者死傷病報告に関して定めた法令等について確認したいと思います。

派遣法によって安衛法の適用について特例が設けられており、一例として労働安全衛生法第100条(報告等)の条文においては、条文中の「事業者」は「事業者(派遣先の事業者を含む。)」等としたうえで適用されます。

そして安全衛生規則第97条において、原則として死亡や休業を含む事故が発生した際には報告することを義務付けています。

死亡または休業4日以上・・・事故発生後、遅滞なく様式第23号により報告

休業4日未満・・・四半期ごとにまとめて報告

また派遣法施行規則第42条の定めにより、派遣先は提出した労働者死傷病報告(様式23号/休業4日以上のもの)について、派遣元へ送付する義務を負います。

 

≪派遣労働者にかかる労働者死傷病報告作成・提出のポイント≫

派遣労働者にかかる労働者死傷病報告の作成に当たっては、直接雇用の労働者と異なる点もあります。前述の通り、派遣元だけでなく直接雇用はしていない派遣先も提出しなくてはなりません。

提出先・・・派遣先は派遣先を所轄する労働基準監督署、派遣元は派遣元を所轄する労働基準監督署。どちらも派遣先の労働基準監督署になるわけではない点に注意。

労働保険番号・・・派遣先は派遣先の労働保険番号、派遣元は派遣元の労働保険番号。労災給付は派遣元の労働保険番号のみで処理するが、労働者死傷病報告について派遣先が提出する場合は派遣先の労働保険番号となる点に注意。

事業場の名称/所在地・・・派遣先は派遣先の事業所名称/所在地、派遣元は派遣元の事業所名称/所在地

労働者数・・・派遣先は派遣先事業所の労働者数、派遣元は派遣元事業所の労働者数

派遣労働者の個人データ・・・派遣先は、被災した派遣労働者について、派遣元に対して、生年月日に関する情報の他、外国人である可能性があるときは、外国人であるか否か、外国人である場合は在留カードの「国籍・地域」「在留資格」の内容を確認し、記入する。なお、これらの情報は、通常派遣元から派遣先に明示される個人データ(派遣法第35条の通知)の範囲外であることから、利用目的を明示すべきものと考えられる。ただし、法令により記載が求められている内容であることから、派遣元から派遣先へのこれらの情報提供について本人の同意は必要ないと考えられる。

その他・・・派遣先郵便番号、派遣先事業場の名称、提出元区分(派遣元・派遣先のどちらであるか○をつける)といった項目への記入が必要な点が直接雇用の労働者と異なる。

 

≪電子申請の義務化≫

令和7年(2025年)より、労働者死傷病報告の提出が電子申請で行うことが原則義務化される方向で進んでいます。事業規模に関係なく義務化され、対応が困難な事業所向けに、紙媒体での提出について経過措置が設けられるほか、労働基準監督署内に電子申請ができるタブレット端末が用意されるということです。目的としては、第154回労働政策審議会安全衛生分科会の資料によれば「報告者(事業者)の負担軽減や報告内容の適正化、統計処理の効率化等をより一層推進するため」とされています。

現在でも厚生労働省の『労働安全衛生法関係の届出・申請等帳票印刷に係る入力支援サービス』にてインターネット上で届出書の作成・印刷が可能となっていますので、上手に利用すれば作成の負担軽減を図ることができます。

 

≪まとめ≫

派遣労働者にかかる労働者死傷病報告は直接雇用の労働者のものと勝手の違う部分がありますので、作成提出に当たっては、よく注意するようにしてください。

また、当然ながら労働者死傷病報告に虚偽の内容を記載したり、提出しなかったりすれば「労災かくし」として送検され罰則を受ける恐れがあります。このようなことのないよう、十分に注意して漏れのないように対応したいところです。

 

 

 

社会保険労務士法人ユアサイド

綿引 文生(わたびき ふみお)

早稲田大学政治経済学部経済学科卒業後、平成19年に社会保険労務士試験に合格。平成21年社会保険労務士法人ユアサイドに入社。令和3年11月パートナー社員就任。派遣会社を含む幅広い業種の企業をこれまでに100社以上担当。人の強みを生かす企業経営の一助となるとの想いで、日々労務相談や手続きに対応している。

記事一覧へ