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2023年11月16日

海外派遣の取扱いおよび注意点について

派遣法では、海外へ労働者を派遣する「海外派遣」の取扱いについて定められており、海外での就業が一時的なものや、概ね1か月以内の場合には、海外派遣には該当しないとされています。しかし、それ以外の場合には海外派遣契約の都度、あらかじめ届出を行う必要があります。今回は、海外派遣を行う場合の取扱いや注意点について確認していきます。

 

・海外派遣と海外出張の違いとは

派遣法第23条第4項に規定する「海外派遣」とは、派遣先が、日本国内に所在する企業であって、その海外での事業所等での指揮命令を受け派遣労働者を就業させる場合です。

一方「海外出張」とは、派遣先が一時的に国外になる場合であっても、主に指揮命令を行うものが日本国内にいて、その業務が国内にある事業所の責任により行われている場合です。また、派遣先が日本国内に所在する企業であって、その派遣先の海外の事業所での派遣就業期間がおおむね1か月を超えなければ、海外派遣には該当しないものとされています。

 

・海外派遣の届出について

労働者派遣が海外の派遣先で行われる場合、国内法が適用されず、派遣労働者の適正な就業の確保が困難であるため、派遣労働者の保護を目的として、派遣元は労働者派遣契約の期間の都度、事前に「海外派遣届出書」と合わせて派遣法41条の派遣先責任者等の規定についての写しを添付して、管轄の労働局を経由し厚生労働大臣へ届出を行う必要があります。この届出を行わなかった場合は30万円以下の罰金に処せられる場合があります。なお、法に違反するものとして、許可の取消し、事業停止命令、改善命令の対象となり、司法処分を受けた場合には許可の取消しの対象となりますので、届出漏れがないよう注意が必要です。

また、海外派遣に関する労働者派遣契約の締結に際して、派遣元は労働者派遣契約(個別契約)に加えて、「派遣先が講ずべき措置」を書面にて定める必要があります。この措置は、海外派遣が行われる場合、法が派遣先に適用されないことから、特に派遣先の構ずべき措置を定めることにより、民事的にその履行を確保させようとするものです。

 

・さいごに

今回は、派遣法で定められた海外派遣の取扱いについてご説明してきました。通常、日本国内で行われる派遣とは異なる手続きもありますので、取扱いについては気を付けておきたいところです。また、海外派遣の場合、労災保険については属地主義の考えから日本国内での適用となるため、海外派遣労働者は対象となりません。そのため、労災保険の保護が受けられるよう「特別加入」制度が設けられています。なお、海外出張の場合には、申請をしなくても労災保険が適用されます。しかしながら、海外派遣と海外出張のどちらに該当するか判断が難しいケースがあるため、特別加入について事前に労働基準監督署へ相談されることをおすすめします。

 

 

 

社会保険労務士法人ユアサイド

綿引 文生(わたびき ふみお)

早稲田大学政治経済学部経済学科卒業後、平成19年に社会保険労務士試験に合格。平成21年社会保険労務士法人ユアサイドに入社。令和3年11月パートナー社員就任。派遣会社を含む幅広い業種の企業をこれまでに100社以上担当。人の強みを生かす企業経営の一助となるとの想いで、日々労務相談や手続きに対応している。

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