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2023年12月1日

令和5年度業務改善助成金について(令和5年11月末時点)

令和5年9月より地域別最低賃金が引き上げられたことに関連して、令和5年8月31日から要件が拡大された業務改善助成金について解説していきます。

1.業務改善助成金とは

業務改善助成金は、最低賃金の引上げの為の環境整備を図ることを目的としており、該当労働者の賃金の引き上げと計画書提出後に、設備投資を行うことでその費用の一部を助成していく年度単位の助成金制度です。

2.助成金の対象事業者と対象要件について

対象事業者と対象要件は以下になります。

<対象事業者>中小企業・小規模事業主

<対象要件>
①雇入れから3か月を経過し、事業場内で事業場内最低賃金と地域別最低賃との差額が50円以内の労働者

例:地域A最低賃金1,112円<事業内最低賃金1,152円 差額40円

②①に該当し、就業規則に定められる新事業場内最低賃金未満の労働者で30円以上の引上げが予定されているもの又は、引上げられた者

例:新事業場内最低最低賃金:1,200円 従業員B:1,152円⇒1,200円(48円↑)

*引上げ後の賃金が新事業場内最低賃金に同額か、それ以上でないと対象とはなりません。

③事業場自体が不交付要件に該当していないこと

例:申請日前後半年間に、解雇を行っていないか

この、3点を満たす事業場が業務改善助成金の交付対象事業場となります。

<申請方法>
①事前に交付申請書・事業実施計画書(設備投資予定)・賃上げ計画と設備に関する見積書(10万円以上は2社以上の相見積書)を提出しなければなりません。

*特例:50人未満の事業場で、既に賃金の引き上げがあった場合、賃上げ結果を提出します。(令和5年4月まで遡って支給対象になります。)

  • 申請書提出期限:申請書の提出期限は、令和6年1月31日までです。

<交付決定通知後>
②交付決定通知後、事業実施計画をもとに実施してください。

  • 事業完了期限:令和6年2月28日となります。ただし、やむを得ない事情の場合、理由書を付けて令和6年3月31日まで延長可能です。

<事業完了後> 
③事業実績報告書・支給申請書に領収書を添付して、1ヶ月以内に提出しなければなりません。

3.助成金の対象となる設備について

助成金の対象となる設備は、生産性の向上や労働能率の増進を図るものおよび、その設備投資に関連した経費(備品等購入費等)に対して一部助成が行われます。

・対象設備の主な種類:機械装置等購入費等

⇒例:デリバリーを行う店舗で、配達時間短縮のために、バイクを3台購入した。

4.コースと支給額について

支給される助成金は、賃金引き上げ額と対象労働者の人数に応じて決められた額と設備費用に応じて割り出された額のうち、安い額の支給となります。以下になります。

賃金引上げ部分の助成金

<30円コース>:1人最大30万円(60万円)~7人以上最大100万円(120万円)

<45円コース>:1人最大45万円(80万円)~7人以上最大150万円(160万円)

<60円コース>:1人最大60万円(110万円)~7人以上最大230万円(230万円)

<90円コース>:1人最大90万円(170万円)~7人以上最大450万円(450万円)

30人未満規模事業所は、()の部分の額となります。

*前述の対象要件を満たす労働者であることが前提です。

事業場内最低賃金額で決定される設備投資額に対する助成率は、以下になります。

設備投資部分の助成<事業場内最低賃金:900円未満>…90%

<事業場内最低賃金:900円以上950円未満>…80%(90%)

<事業場内最低賃金:950円以上>…75%(80%)

*()部分は、生産性が向上した場合の率となります。

<計算例>:30円コースで、対象者が1人。設備額は9万円の場合の助成金額

(賃金引上げ部分):30万円

実際に係った設備投資費用×事業場内最低賃金額で決定された助成率

⇒例:9万円×75%=67,500円(設備投資額をもとにした助成金額)

支給金額:67,500円

5.助成金支給後の報告について

・報告場所:各都道府県労働局 雇用環境均等室(申請時と同様です。)

・申請方法:賃金引上げ完了6か月経過後に、解雇等の有無と賃金引上計画に基づいて引き上げた労働者の賃金の状況の確認のため、状況報告書を提出しなければなりません。

6.最後に

業務改善助成金を検討の際には、国の予算の関係で終了する可能性もあるため、一度申請時に都道府県労働局に確認をお願い致します。また、申請時から事業完了後、そして状況報告の提出まで、不交付事由に該当していないか審査がされます。審査結果によって、返還になる場合もありますのでご注意ください。

 

 

 

社会保険労務士法人ユアサイド

綿引 文生(わたびき ふみお)

早稲田大学政治経済学部経済学科卒業後、平成19年に社会保険労務士試験に合格。平成21年社会保険労務士法人ユアサイドに入社。令和3年11月パートナー社員就任。派遣会社を含む幅広い業種の企業をこれまでに100社以上担当。人の強みを生かす企業経営の一助となるとの想いで、日々労務相談や手続きに対応している。

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