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個人単位の期間制限と雇用安定措置について

大阪労働局は令和6年2月8日付で、「派遣元事業主に対する労働者派遣事業改善命令について」と題して報道発表を行いました。

これは、派遣会社が個人単位の期間制限を超えて労働者派遣を行ったことに対する処分で、改善命令の内容は派遣法に則して労働者派遣事業が行われているか総点検を行い、違反があった場合は労働者の雇用の安定を図るための措置を講ずることを前提に速やかに是正すること…などとなっています(報道によれば、これによる処分は全国初ということです)。

そこで今回は、派遣法に定められている個人単位の期間制限と雇用安定措置について、改めて確認をしたいと思います。

 

  • 個人単位の期間制限について

3年ルールなどとも言われるもので、派遣先事業所における同一の組織単位ごとの業務(有期プロジェクトや産休代替等は除く)について、無期雇用や60歳以上に該当しない同じ派遣労働者を、3年を超えて派遣してはならないという制限です。

組織単位とはいわゆる「課」や「グループ」等で、派遣先組織の最小単位よりも大きな単位を想定しているとされています(ただしこれは目安で実態に即して判断されます)。

期間制限を超えて派遣すると、派遣先による”労働契約申込みなし”の対象になります。

 

  • 雇用安定措置について

上記、個人単位の期間制限に達する見込みとなる派遣労働者に対しては、雇用安定措置を講じる義務が課されています。求められる雇用安定措置の内容は、次のいずれかです。なお、派遣元は派遣労働者が希望する措置の内容を聴取して派遣元管理台帳に記載しなければならないとされています。

  1. 派遣先への直接雇用依頼
    ⇒これを選択して直接雇用に至らなければ2~4を追加で実施
  2. 新たな就業機会(派遣先)の提供
  3. 派遣元での無期雇用
  4. その他安定した雇用の継続を図るために必要な措置(有給教育訓練、職業紹介、紹介予定派遣等)

その他、1年以上同一組織単位に派遣されている者についても、同様の雇用安定措置の努力義務が課されています。

 

  • さいごに

3年ルールにより同一組織単位で派遣就業が出来なくなる者に対する雇用安定措置の実施義務を避ける目的で、3年未満の更新上限を設けることは、脱法的で厳に避けるべきであると、派遣元指針に示されています。また、更新上限を3年とすることも、雇用安定措置を行う意思のないものと判断されかねません。さらに上述の通り1年以上派遣されている者に対する努力義務もあります。

このことから派遣労働者の有期契約に更新上限を設ける際は、雇用安定措置との兼ね合いを踏まえてこれを慎重に検討する等、法の趣旨に沿った派遣事業の運営が望まれるところです。

 

 

 

社会保険労務士法人ユアサイド

綿引 文生(わたびき ふみお)

早稲田大学政治経済学部経済学科卒業後、平成19年に社会保険労務士試験に合格。平成21年社会保険労務士法人ユアサイドに入社。令和3年11月パートナー社員就任。派遣会社を含む幅広い業種の企業をこれまでに100社以上担当。人の強みを生かす企業経営の一助となるとの想いで、日々労務相談や手続きに対応している。

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