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2024年6月28日
派遣先で労働災害が起こった場合の手続きおよび注意点について
業務上の事由(業務災害)または通勤途上(通勤災害)で災害が起こった際、負傷、疾病、障害または、不幸にも死亡してしまった場合には、被災労働者または家族に対して必要な労災保険給付が行われます。今回は、派遣労働者が派遣先での労働災害が起こった場合の手続きの流れおよび注意点について説明します。
・労災保険から受けられる主な保険給付
①療養(補償)給付:医療機関(労災指定病院等)で治療を受けるとき。
②休業(補償)給付:療養のため4日以上休業し、賃金を受けることができないとき。
③傷病(補償)年金:療養開始後1年6か月経っても傷病が治らず、一定の傷病等級該当したとき。
④障害(補償)給付:障害が残り、一定の障害等級に該当したとき。
⑤遺族(補償)給付:労働者が死亡し、一定の要件を満たす遺族がいるとき。
*業務災害の給付名称には「補償」が入ります。
(例)業務災害:療養補償給付、通勤災害:療養給付
・派遣先で労災事故が発生した際の流れ
①派遣先は、派遣元へ事故の発生状況を報告する。
②派遣元は、報告を受けて「療養(補償)給付」様式の作成を行い、派遣先へ提出する。
③派遣先は、上記②の記載内容が事実と相違ない旨を証明する。
④派遣先は、労働者死傷病報告(業務災害の場合)を作成し、写しを派遣元へ送付する。
また、派遣先は、作成した労働者死傷病報告を管轄の労働基準監督署へ提出する。
⑤派遣元は上記④の写しをもとに労働者死傷病報告を作成し、管轄の労働基準監督署へ提出する。
・派遣先で労災が起こってしまった際の注意点
①派遣元は、派遣労働者に対し災害補償責任があるため、労災保険給付の手続きを行うために必要な助力を行うこと。
②派遣元・派遣先の双方が各々「労働者死傷病報告」を作成し、管轄の労働基準監督署へ提出すること。
③派遣先には、労働安全衛生法上の使用者責任があるため、労働災害の発生原因を調査し再発防止対策を講ずること。
・まとめ
派遣労働者にかかる労災保険は、労働時間や契約期間の長さにかかわらず、すべての派遣労働者が対象となります。また、業務災害が起こってしまった場合には、先に述べたように、派遣元、派遣先の双方に「労働者死傷病報告」の提出義務があります。この提出を怠った場合には「労災かくし」とみなされますので、十分に注意し、漏れが無いように対応してください。

社会保険労務士法人ユアサイド
綿引 文生(わたびき ふみお)
早稲田大学政治経済学部経済学科卒業後、平成19年に社会保険労務士試験に合格。平成21年社会保険労務士法人ユアサイドに入社。令和3年11月パートナー社員就任。派遣会社を含む幅広い業種の企業をこれまでに100社以上担当。人の強みを生かす企業経営の一助となるとの想いで、日々労務相談や手続きに対応している。