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2024年10月30日

フリーランス・事業者間取引適正化等法(フリーランス新法)

人材サービスの一環として、企業とフリーランスの仲介をしたり、人材サービス会社がフリーランスと直接契約したりすることが増えています。

働き方の多様化が進展する中、フリーランスという働き方もその選択肢の一つとなっていますが、

発注事業者と業務委託を受けるフリーランスの取引においてトラブルが多発しているという実態があります。これを改善し、フリーランスの方が安定的に働くことができる環境を整備するのが、フリーランス新法の趣旨及び目的となります。

 

本法律におけるフリーランス【特定受託事業者】とは、以下のいずれかに該当する者です。

  1. 個人であって従業員を使用しないもの
  2. 法人であって、一の代表者以外に他の役員がなく、かつ、従業員を使用しないもの

※1の「従業員を使用」とは週20時間以上かつ31日以上の雇用が見込まれる労働者を雇用することです。

一方、発注事業者【特定業務委託事業者】とは以下のいずれかに該当する者です。

  1. 個人であって、従業員を使用するもの
  2. 法人であって、役員がいる、または従業員を使用するもの

なお、単に「フリーランスに業務委託をする事業者」のことを【業務委託事業者】といい、従業員を使用していない場合でも下記①の取引条件の明示義務があることに注意が必要です。

 

※業務委託とは事業者がその事業のために他の事業者に給付に係る仕様、内容等を指定して、

物品の製造・加工、情報成果物の作成、役務の提供を委託することをいいます。

 

① 取引条件の明示義務

業務委託事業者は以下の明示事項を書面、或いは電磁的方法により明示しなければなりません。

①業務委託事業者および特定受託事業者の商号、氏名もしくは名称または事業者別に付された番号、記号その他の符号であって業務委託事業者及び特定受託事業者を識別できるもの

②業務委託をした日③特定受託事業者の給付(提供される役務)の内容④給付を受領し、または役務の提供を受ける期日等⑤給付を受領し、または役務の提供を受ける場所⑥給付の内容について検査をする場合にはその検査を完了する日⑦報酬額⑧支払期日⑨現金以外で報酬を支払う場合の明示事項

 

② 期日における報酬支払義務

特定業務委託事業者は給付内容を受領した日から起算して60日以内のできる限り短い期間内に報酬支払期日を定めなければいけません。支払期日が定められていない場合には受領した日が報酬支払日となりますので注意が必要です。

 

③ 7つの禁止事項(業務委託期間が1か月以上の場合のみ)

特定業務委託事業者は、「受領拒否、報酬減額、返品、買いたたき、購入・利用強制、不当な経済上の利益の提供要請、不当な給付内容の変更および不当なやり直し」が禁止されています。

 

④ 募集情報の的確表示義務

特定業務委託事業者は、広告等により特定受託事業者の募集を行うとき、以下に定める情報について虚偽または誤解を生じる表示をしてはならず、その情報を正確かつ最新の内容に保たなければなりません。

①業務内容②業務に従事する場所・期間・時間に関する事項③報酬に関する事項④契約の解除・不更新に関する事項⑤特定受託事業者の募集を行うものに関する事項

 

⑤ 育児介護等と業務の両立に対する配慮義務(業務委託期間が6か月以上の場合のみ)

特定業務委託事業者は、特定受託事業者より申出があった場合には、育児介護等と業務を両立できるように「必要な配慮」をしなければなりません。具体的には打ち合わせ時間の変更やオンラインでの業務対応、納期の変更等ですが、必要な配慮ができない場合には、そのやむをえない理由を説明することで配慮ができないということも許容されています。

 

⑥ ハラスメント対策に係る体制整備義務

特定業務委託事業者は、①ハラスメントを行ってはならない旨の方針の明確化、方針の周知・啓発②相談に応じて適切に対応するために必要な体制の整備③業務委託におけるハラスメントへの事後の迅速かつ適正な対応といった措置を講じなければなりません。

ハラスメントとはセクハラ、マタハラ、パワハラの3つとされており、ハラスメントに関する相談をしたことで不利益な取り扱いをしてはなりません。

 

⑦ 中途解除等の事前予告・理由開示義務(業務委託期間が6か月以上の場合のみ)

特定業務委託事業者は、中途解除をする場合には少なくとも30日前までに書面交付、ファクシミリ、電子メール等いずれかの方法でその予告をしなければなりません。また、予告の日から解除日までフリーランスから理由の開示請求があった場合には原則開示しなければなりません。

 

違反行為への罰則

特定受託事業者は、取引適正化に関する規制違反に対しては公正取引委員会・中小企業庁、就業環境整備に関する規制違反に関しては厚生労働省に対し違反の事実を申し出ることができます。各所管省庁は申出に応じて報告徴収・立入検査といった調査を行い、指導・助言の他、勧告を行います。業務委託事業者が当該勧告に従わない場合には是正命令が発せられ、これに違反した場合には50万円以下の罰金が科せられます。なお、この申出をしたことを理由として不利益な取扱いをしてはなりません。

 

フリーランス新法を複雑にするのは公正取引委員会・中小企業庁や厚生労働省等の所管省庁が複数あることに加え、独禁法や下請法等の既存の法律と重なる部分があることがあげられます。

原則はフリーランス新法が適用され、独禁法や下請法に定められる制裁が重複して課されることはありません。不明点については下記の相談窓口を利用し、規制違反のないよう注意したいところです。

 

相談窓口

公正取引委員会及び中小企業庁(上記①~③及び左記規定違反申出による不利益な取扱い)

都道府県労働局(上記④~⑦及び左記規定違反申出による不利益な取扱い)

なお、労働者性の判断については別のお話で、労働者と判断される場合には各労働法が適用されることになることに十分注意しましょう。

 

 

 

社会保険労務士法人ユアサイド

綿引 文生(わたびき ふみお)

早稲田大学政治経済学部経済学科卒業後、平成19年に社会保険労務士試験に合格。平成21年社会保険労務士法人ユアサイドに入社。令和3年11月パートナー社員就任。派遣会社を含む幅広い業種の企業をこれまでに100社以上担当。人の強みを生かす企業経営の一助となるとの想いで、日々労務相談や手続きに対応している。

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