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有期雇用契約の雇い止めについて

いわゆる雇止めとは、有期雇用契約期間が満了したあと、契約を更新せずに雇用関係を終了させることをいいます。有期雇用契約はその契約期間が満了すれば、当然にその契約が終わるものです。雇用契約が満了したあとも、その者を改めて雇用したい場合には新たに契約を締結することになりますが、これがいわゆる「契約更新」にあたります。

このように、雇止め自体は有期雇用契約の性質上当然に発生するものですが、時として労使間のトラブルに発展する場合もあります。

 

1.産前産後休業、育児休業、介護休業等の取得者

妊娠・出産・育児休業等の事由を契機として雇止めその他の不利益取り扱いを行うと均等法、育児介護休業法の違反になります。この「契機」はとても広く解釈するとされており、これらの事由終了から1年以内に行われた雇止め等の不利益取り扱いは、原則としてこれらを契機として行われたと扱うものとされています。このような雇止めを労働者の合意なく行った場合、労使トラブルに発展する可能性が極めて高いと言えます。

 

2.自動更新の設定、更新手続き不備

上述した「契約更新」の概念からすると、自動更新は労使双方何の確認も手続きもなく契約が更新されます。労働者側からすれば、当然契約が更新されるものと考えていることが想定されます(もっというと契約期間が有期であるという意識がお互いに希薄であることもあります)。そのような中、突然に有期契約の期間が満了したので終了である旨を告げれば、トラブルになることは容易に想像ができるところです。自動更新とまではいかなくても、契約更新の手続きが数回に一度しか行なわれないまま、契約が引き続いている場合も同様のことが考えられます。手続きの不備は、契約更新のトラブルに繋がりかねません。

3.有期労働契約の締結、更新、雇止め等に関する基準(以下「雇止め基準」)

有期雇用契約を3回以上更新している、契約更新を繰り返すなどして通算1年を超えている等の場合、雇止め基準により、更新しない場合は予告をする必要があるとしています。また、契約を反復更新する中、更新上限を新たに設定・減らす場合は説明が必要としています。これらのほか、雇止め基準に定められた手続きを履行せずに雇止めをしたり、急に更新上限を設定して雇止めしたりすると、トラブルに発展する可能性があります。

なお、トラブルに発展した場合で、契約更新の回数や通算契約期間が長くなっている場合、雇止め時に解雇権乱用法理の(類推)適用がなされるようなことも考えられるため、注意が必要です。

 

最後に・・・

有期雇用契約は、正しく運用すれば臨時的な雇用のために利用するなど、有効な面も多くあります。ただし、上述のように運用や手続きについてはきちんと行わなければ、そのメリットもなくなり、トラブルのもとになりかねません。有期雇用契約をきちんと理解し、手続きや運用を行いたいものです。

なお、臨時的な雇用のために利用するという面では、直接雇用ではない労働者派遣が有効な場面もありますので、状況に応じて利用を検討するのもよいかもしれません。

 

 

 

社会保険労務士法人ユアサイド

綿引 文生(わたびき ふみお)

早稲田大学政治経済学部経済学科卒業後、平成19年に社会保険労務士試験に合格。平成21年社会保険労務士法人ユアサイドに入社。令和3年11月パートナー社員就任。派遣会社を含む幅広い業種の企業をこれまでに100社以上担当。人の強みを生かす企業経営の一助となるとの想いで、日々労務相談や手続きに対応している。

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