HuApp MEDIA HR業界のお役立ち情報を発信中 スポットワークの利用に関する注意点について

2025年10月7日

スポットワークの利用に関する注意点について

今回はスポットワークについて、どのようなものなのか、また、スポットワークを行うにあたっての注意点等をご説明していきます。

 

スポットワークとは、「短時間・単発の就労を内容とする雇用契約のもとで働くこと」をいいます。労働者は空いた時間に働くことができ、時間を有効に使えることがメリットであり、事業主としては一時的な人員不足が生じた場合に迅速に募集ができる等、労働者・事業主双方にとって利便性が高く近年利用者が急増している働き方です。

 

スポットワークは、アプリを用いて事業主が掲載した求人にスポットワーカーが応募し、面接等を経ることなく、短時間にその求人と応募がマッチングすると勤務できるという流になります。その為、スポットワーカーが応募した時点で労使双方の合意があったものとして労働契約が成立するものとされます。

労働契約が成立するとスポットワーカーは労働者となり、事業主には労働基準法等を守る義務が生じる為、予定された就業開始前に労働条件を明示すること等が必要です。

このように成立確定した労働契約のキャンセル・変更(日付・時間の変更等)については、労働契約の変更に当たるため、事業主とスポットワーカー双方の合意によることが原則となり、事業主都合で一方的に行うことは難しいと言えます。

なお、キャンセルや短縮した場合、事由によっては休業の取扱いになることもあります。この場合、労働基準法第26条の「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当しうるので、スポットワーカーに対し、所定支払日までに休業手当を支払う必要があると考えられます。

 

次に、スポットワーカーへの賃金の支払いについては通常、事業主がスポットワーク仲介業者に立替での支払を委託して、雇用契約上の賃金支払い日までにスポットワーカーが指定した金融機関口座に振り込む方法で行います。スポットワーカーは労働者ですので、賃金台帳の作成や保管義務があります。単発の就労だから賃金台帳作成等の必要はないということはありませんので、ご注意下さい。

なお通常の賃金計算は、スポットワーク仲介業者の用意するアプリ上で完結することがほとんどですが、何かしらの事情により、アプリ上で計算することができない要素が入った場合は、事業主はその部分について自ら賃金を正しく計算し、支払うことが求められます。

その他にも通勤途中または仕事中にケガをした場合は、就業先の事業について成立する保険関係に基づき労災保険給付を受ける事ができます。失念しやすい点として、労働保険の年度更新です。スポットワークも労働保険料の計算の対象に含めなければなりません。

社会保険・雇用保険の加入については、「短時間・単発の就労を内容とする雇用契約のもとで働くこと」ということもあり加入義務が生じない労働時間等の範囲内で行うことが一般的ですが、継続的な使用になってしまっているなど例外的に加入義務が発生する可能性があります。その場合については、保険加入をしなければならないことはもとより、各スポットワーク仲介業者で今後のその人への対応が異なることがありますので、サービスの利用規約をご確認下さい。

スポットワーカーが外国人の場合は、スポットワーク仲介業者が1次確認をしているケースもありますが、事業主の義務として、就労可能な在留資格であるかを確認しなければなりません。また、翌月末日までに外国人雇用状況届出書の提出も必要となります。

スポットワークにおいて、給与は時給または日給にて支払うことになり、その際、通常は源泉徴収税額表の丙欄が適用されます。スポットワーク仲介業者によっては、徴収・納付の手続きが出ないよう、1日の課税支給相当額が課税されない限度の9,300円未満となるよう制限が設けられている場合があります。しかし、時間外勤務の発生等により給与所得相当額が9,300円以上となる場合には、源泉所得税を差し引いて支給することとなります。源泉徴収した所得税は事業主が他の通常の労働者等の分と合わせて所轄の税務署に納付する必要があります。源泉徴収票の配布は、スポットワーク仲介業者のアプリ上で出来る事が多いと思われます。書面での交付も可能ではありますが、スポットワーク仲介業者によって対応方法が異なります。

給与支払報告書については、原則として全従業員の提出が義務付けられていますが、特例として支払額が年間30万円以下の退職者のみ提出が不要とされています。しかし、労働者の給与額が年間30万円を超える場合には、1月1日~12月31日に支払った給与について、翌年1月31日(土日祝日の場合は翌平日)までに給与支払報告書を作成し、提出しなければなりませんのでご注意下さい。

その他、ハラスメント防止のための対策(相談窓口や行為者に対する措置内容の周知等)についても講じる必要があります。

 

スポットワークを利用するにあたり、利用料が発生することも忘れてはなりません。スポットワーク仲介業者からの請求は、スポットワーク仲介業者が労働者に立替払いした賃金相当額の他、各スポットワーク仲介業者が設定しているサービス利用料(+消費税)となるのが通常です。各サービスの利用料についても、よく確認して下さい。

 

今回は、スポットワークについての注意点等についてご説明致しました。スポットワークに限った話ではありませんが、今回ご説明したスポットワークも便利な反面、間違った取扱いをしてしまうと労働問題となりかねません。法令違反とならないよう、スポットワークを利用される際は、各サービスの利用規約やヘルプページ等をよく確認し、併せて厚生労働省のスポットワークにおける留意事項のリーフレット等を参考にする等、適切な労務管理を行うことが必要です。

 

 

 

社会保険労務士法人ユアサイド

綿引 文生(わたびき ふみお)

早稲田大学政治経済学部経済学科卒業後、平成19年に社会保険労務士試験に合格。平成21年社会保険労務士法人ユアサイドに入社。令和3年11月パートナー社員就任。派遣会社を含む幅広い業種の企業をこれまでに100社以上担当。人の強みを生かす企業経営の一助となるとの想いで、日々労務相談や手続きに対応している。

記事一覧へ