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2021年12月17日
「派遣元」が実施すべき労働安全衛生法の重点事項について
労働安全衛生法は、事業者が労働者の安全を守るための法律です。労働者派遣事業において、派遣労働者を雇用している雇用主と派遣労働者が実際に行う仕事を指揮・監督する事業主が異なるため、派遣労働者の一般的な健康管理等については「派遣元」が、安全管理全般に関する事項、衛生管理のうち就業に伴う具体的な事項については「派遣先」がそれぞれ事業者責任を負うことになります。今回は、「派遣元」が実施すべき重点事項について確認をしていきます。
1. 派遣労働者を含め安全衛生管理体制を確立しましょう。
派遣元は、派遣労働者を含め算出した常時使用する労働者数等に応じて、
①総括安全衛生管理者、衛生管理者、産業医等の選任等、②衛生委員会の設置等を行います。
・常時1,000人以上の労働者(派遣労働者を含む)を使用する事業場は総括安全衛生管理者を選任し、所轄労働基準監督署に選任報告を行う必要があります。
・常時50人以上の労働者(派遣労働者)を使用するすべての事業場は、衛生管理者や産業医を選任し、また、衛生委員会を設置する必要があります。 |
2. 健康診断およびその結果に基づく事後処置等を確実に実施しましょう。
☆一般健康診断を確実に実施してください。
・常時使用する派遣労働者に対し、雇入れの際やその後1年以内ごとに1回、定期に、一般定期健康診断を実施し、その結果に基づく事後措置を講じてください。
☆派遣先が実施した特殊健康診断の結果を入手し、保存してください。
・派遣労働者に関する特殊健康診断の結果の記録の写しを入手し、保存してください。
・特殊健康診断の結果は、派遣元事業者から派遣労働者に通知してください。
☆派遣先における有害業務の作業の記録を入手し、保存してください。
・一定の有害業務を行う派遣労働者の作業の記録の写しを入手し、保存するとともに、健康管理に活用するよう努めてください。
3. 長時間にわたる労働に関する面接指導等を適切に実施しましょう。
・派遣元は、派遣労働者の時間外・休日労働時間に応じて、時間外・休日労働が1月あたり100時間を超える派遣労働者であって申し出を行ったものに係る医師による面接指導等を適切に実施し、措置を講じてください。
4. 心理的な負担な程度を把握するための検査等を適切に実施しましょう。
・常時使用する労働者が50人以上(派遣労働者を含む)の派遣元は、1年以内ごとに1回、心理的な負担の程度を把握するための検査(ストレスチェック)及び面接指導等を実施してください。
5. 安全衛生教育等を適切に実施しましょう。
派遣労働者は一般の労働者に比べて業務の経験年数が短く、労働災害発生率が相対的に高いので、危険有害業務の有無にかかわらず、派遣労働者の作業内容に即した効果的な安全衛生教育を確実に実施する必要があります。
・派遣労働者を雇い入れたときや、派遣労働者の派遣先を変更するなど作業内容を変更したときは、遅滞なく、安全衛生教育を実施してください。
・派遣先で派遣労働者の作業内容が変更されたことを把握したときは、派遣先が行った作業内容変更時教育の実施結果を書面等で確認してください。
・安全衛生教育は、派遣労働者が従事する業務に関し、次の事項に応じて、派遣労働者の安全衛生を確保するために必要な内容と時間を以って行ってください。
・作業内容
・取り扱う機械等や原材料の取扱い方法、それらの危険性又は有害性など派遣労働者の安全衛生のために必要な事項 |
そのため、これらの情報を派遣先から事前に入手するとともに、派遣先に必要な協力を求めてください。
<派遣先からの協力例>
・教育カリキュラムの作成支援 ・教育用テキストの提供 ・講師の紹介や派遣 ・教育用の施設や機材の貸与 など |
・派遣先に対し、安全衛生教育の実施を委託した場合は、その実施結果について書面等で確認してください。
・特別教育が必要な危険有害業務に派遣労働者が従事するする場合は、派遣先が実施した特別教育の実施結果を書面等で確認してください。
6. もし派遣労働者が労働災害に被災した場合は・・・。
☆労働者死傷病報告を提出してください。
・派遣労働者が派遣中に労働災害等により死亡または休業したときは、派遣元、派遣先がそれぞれ労働者死傷病報告を作成し、所轄の労働基準監督署に提出してください。
・派遣元は、派遣先事業場において派遣労働者が労働災害に被災したことを把握した場合は、派遣先から送付された所轄の労働基準監督署に提出した労働者死傷病報告の写しの内容を踏まえ、労働者死傷病報告を作成し、派遣元事業場を所轄する労働基準監督署へ提出してください。
・なお、派遣先は、労働者死傷病報告を提出したときは、その写しを派遣元に送付する必要があります。
☆派遣先から労働災害の原因や対策について、情報を入手し、再発防止に活用してください。
・労働災害の原因や対策について、必要に応じて派遣先に情報提供を求め、雇入れ時教育に活用するほか、労働災害が発生した業務と同種の業務に従事する派遣労働者に情報提供してください。

社会保険労務士法人ユアサイド
工藤 あさみ(くどう あさみ)
早稲田大学 第二文学部卒業後、平成27年社会保険労務士法人ユアサイド入職。平成29年社労士試験合格、登録。派遣会社での労務管理経験を活かし、労務相談等を行う。「親しみのある社労士」を目指して日々邁進中。