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2021年11月1日
年次有給休暇の管理と年5日の確実な取得のための方法
労働基準法が改正され、2019年4月から、全ての企業において、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者(管理監督者を含む)に対して、年次有給休暇の日数のうち年5日については、使用者が時季を指定して取得させることが義務付けられました。
厚生労働省の2020年の「就労条件総合調査」では、労働者の年次有給休暇の年間平均取得日数が10日を超え、過去最多となりました。年5日の年休取得義務化の効果の大きさが窺えるものの、平均取得率については依然として6割弱にとどまっています。今年の7月には愛知の給食管理業者が、労働者6人に対して年次有給休暇取得の時季指定を怠ったとして、労働基準法第39条(年次有給休暇)違反の疑いで名古屋区検に書類送検されており、取得義務を怠ると、労働者はもちろん、会社にとっても大きな不利益を被ることになるため注意が必要です。人ごとに入社日が異なる事業場などでは、基準日が人ごとに異なり、誰がいつまでに年次有給休暇を5日取得しなければならないのか、細やかな管理が必要となります。今回は、年次有給休暇を管理し易くするための方法と、労働者の方に年5日の年休を確実に取得していただくための方法についてご紹介していきます。
1. 年次有給休暇を管理しやすくするための方法
方法① 一斉付与日を設ける
対象:人員規模の大きな事業場、新卒一括採用をしている事業場など
年次有給休暇の付与日を1つにまとめることが有効です。
例えば、1/1や4/1に年次有給休暇を一斉付与することで、より多くの方を統一的に管理することが可能となります。
方法② 基準日を月初などに統一する
対象:中途採用を行っている事業場、比較的小規模な事業場など
入社が月の途中であっても、基準日を月初などに統一します。例えば、同じ月に採用した方の基準日を月初に統一することにより、統一的な管理が可能となります。
2. 年5日の確実な取得のための方法
方法① 基準日に年次有給休暇取得計画表を作成する
年次有給休暇をより多く取得するためには、計画的に取得することが重要です。年度別や四半期別、月別などの期間で個人ごとの年次有給休暇取得計画表を作成し、年次有給休暇の取得予定を明らかにすることにより、職場内において取得時季の調整がし易くなります。作成するタイミングとしては、 労働者が年間を通じて計画的に、確実に年5日の年休を取得できるよう、まずは基準日にその年の年次有給休暇取得計画表を作成すると良いでしょう。
方法② 使用者からの時季指定を行う
2019年4月からは年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対して、使用者が年5日の年休を時季指定して与える必要があります。使用者からの時季指定は、基準日から1年以内の期間内に、適時に行うことになりますが、年5日確実に取得するに当たっては、
1)基準日から一定期間が経過したタイミング(半年後など)で年次有給休暇の請求・取得日数が5日未満となっている労働者に対して、使用者から時季指定をする。
2)過去の実績を見て取得日数が著しく少ない労働者に対しては、労働者が年間を通じて計画的に年休を取得できるよう基準日に使用者から時季指定をすることで、労働者からの年休の請求を妨げず、かつ効率的な管理を行うことができます。
方法③ 年次有給休暇の計画的付与制度(計画年休)を活用する
計画年休の活用によって、前もって計画的に休暇取得日を割り振るため、労働者はためらいを感じることなく年休を取得することができます。計画的付与制度で取得した年休も5日取得義務化の5日としてカウントされます。
日数:付与日数から5日を除いた残りの日数を計画的付与の対象にできます。
例)年次有給休暇の付与日数が11日の労働者
6日…労使協定で計画的に付与できる 5日…労働者が自由に取得できる
方式:企業や事業場の実態に応じた方法で活用しましょう。
1)企業や事業場全体の休業による一斉付与方式
全労働者に対して同一の日に年次有給休暇を付与する方式
(例えば製造業など、操業をストップさせて全労働者を休ませることができる
事業場などで活用されています。)
2)班・グループ別の交替制付与方式
班・グループ別に交替で年次有給休暇を付与する方式
(例えば、流通・サービス業など、定休日を増やすことが難しい
企業・事業場などで活用されています。)
3)年次有給休暇付与計画表による個人別付与方式
年次有給休暇の計画的付与制度は、個人別にも導入することができます。
夏季、年末年始、ゴールデンウィークのほか、誕生日や結婚記念日など
労働者の個人的な記念日を優先的に充てるケースがあります。
※計画年休の導入には就業規則による規定と労使協定の締結が必要になります。
年次有給休暇の取得は労働者の心身の疲労の回復、生産性の向上など労働者・会社双方にとってメリットがあります。年5日の年次有給休暇の取得はあくまで最低限の基準です。 5日にとどまることなく、労働者がより多くの年次有給休暇を取得できるよう、環境整備に努めましょう。

社会保険労務士法人ユアサイド
工藤 あさみ(くどう あさみ)
早稲田大学 第二文学部卒業後、平成27年社会保険労務士法人ユアサイド入職。平成29年社労士試験合格、登録。派遣会社での労務管理経験を活かし、労務相談等を行う。「親しみのある社労士」を目指して日々邁進中。