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2022年8月25日

令和4年10月1日~育児休業にまつわる法律の大幅改正

【社会保険料免除要件の見直し】

被保険者から短期間の育児休業等を取得することの申し出があった場合において、事業主からの届出により社会保険料が免除になりますが、育児休業の開始月においては、同月の末日が育児休業等期間中である場合に加え、同月に14日以上の育児休業等を取得した場合にも、保険料が免除されます。14日以上の育児休業はあくまでも同月内の休業に限定されてしまうため、月を跨いだ場合は適用されないことにご注意ください。賞与保険料は、1カ月を超える(暦日で判定)育児休業等を取得した場合に免除されます。つまり、給与に関しては対象者を広げているのに対し賞与に関しては対象者を狭めていることになります。

 

具体例を挙げると、以下の通りとなります。

例① 10月15日から10月30日まで育児休業を取得した場合

⇒同月内かつ休業が16日間のため免除されます。

例② 10月15日から11月25日まで育児休業を取得した場合

⇒10月分は免除されますが、11月分は(11月だけでみると14日間以上ありますが)同月内の育児休業とは見なされないため、対象とはなりません。現行と同じ取り扱いとなります。

例③ 7月15日に賞与が支給され、7月30日から8月1日まで育児休業を取得した場合

⇒1カ月を超える休業ではないため、賞与保険料の免除はされません。現行では、月末に1日でも取得している場合免除されておりましたが、その要件は撤廃されました。これは、短期間の育児休業を取得する被保険者が増加してしまい、不公平との指摘を受けた背景があると考えらえます。

例④ 7月15日に賞与が支給され、7月20日から8月21日まで育児休業を取得した場合

⇒休業が1カ月を超えているため賞与保険料は免除されます。なお、この場合給与の社会保険料は7月分は免除され、8月分は免除されないことになります。

 

【子出生時の柔軟な男性育休の枠組み・分割取得】

この改正が行われた背景として、同じく令和4年10月1日から施行される、男性の出生時育児休業(男性版産休)が大きく関わっています。女性は産休・育休の制度がおおまかに整っていることに対し、男性は育休の制度しかないため、今回新設されました。出生時育児休業とは、男性が、子の出生後8週間以内に、最大4週間まで休業することができる制度をいいます。

現行ではパパ休暇という制度がありましたが、出生時育児休業の施行に伴い廃止されることとなりました(妻の産後8週間以内に夫が育児休業を取得した場合、特別な事情がなくても2回目の育児休業を取得できる制度です)。

 

対象期間として、子の出生日から8週間以内と定められておりますが出産予定日と出産日が異なる場合には次のような取り扱いとなります。

出産予定日より前に出産した場合(予定日12月5日・出産日12月1日)

⇒12月1日から1月30日まで(12月5日より8週間)

出産予定日より後に出産した場合(予定日12月1日・出産日12月5日)

⇒12月1日から1月30日まで(12月5日より8週間)

休業期間は上記8週間のうち最大4週間と定められており、また2回に分割取得することもできます。この場合は合計で28日間を限度とすることと、初回の申請時に2回分をまとめて申請する必要があります。労働者が後から分割を申し出た場合は事業主は申請を拒否することができますので、事前に申し出をする必要があります。

また、労使協定の締結により、労働者が合意した範囲で休業中に就業することが可能となっています。

①労使協定の締結

②労働者の個別合意

③一定範囲内での就業

就業日数の合計は、出生時育児休業期間の所定労働日数の半分以下とすること。

就業日における労働時間の合計は、出生時育児休業期間における所定労働時間の合計の半分以下とすること。

出生時育児休業開始予定日とされた日又は出生時育児休業終了予定日とされた日を就業日とする場合は、当該日の労働時間数は、当該日の所定労働時間数に満たないものとすること。

 

【出生時育児休業給付金の受給】

なお、この休業を取得した場合には出生時育児休業給付金が受けられます。基本的な要件は育児休業給付金と変わりはありませんが、休業日数によって就業日数の要件も変わっていきます。最大の28日間の休業をしている場合は、就業日数が10日以下(10日を超える場合は80時間)以下であることが要件で、14日の休業の場合は最大5日間(5日を超える場合は40時間)となります。計算方法は以下の通りなので、休業日数を当てはめて計算してください。

14日間の休業の場合 10日×14/28=5日

5日間の休業の場合 10日× 5/28=2日(端数切り上げ)

 

【まとめ】

今回は、育児休業について大幅な改正があるため、事業主は労働者から申出があった場合は慎重に対応しなくてはなりません。また、労働者自身も改正の内容に気づかず、従来通りの申出のみで「損」をしてしまうかもしれません。この点に関しては令和4年4月1日より新たに「個別周知・意向確認」が義務となっており、事業主が申出をした労働者に対し意向を確認する面談を行ない、措置を講じることが必須となっております。確認に用いる様式のサンプルは厚生労働省のHPより確認することができますので、事業主はそれを参考にしつつ、労働者が安心して子育てができる環境を事業主ともに創っていく必要があります。

 

 

 

社会保険労務士法人ユアサイド

綿引 文生(わたびき ふみお)

早稲田大学政治経済学部経済学科卒業後、平成19年に社会保険労務士試験に合格。平成21年社会保険労務士法人ユアサイドに入社。令和3年11月パートナー社員就任。派遣会社を含む幅広い業種の企業をこれまでに100社以上担当。人の強みを生かす企業経営の一助となるとの想いで、日々労務相談や手続きに対応している。

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