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2023年4月21日

男女の賃金の差異の算出及び公表が義務化

日本における男女間賃金格差は長期的にみると縮小傾向にありますが、他の先進国と比較すると依然として大きいと言わざるを得ません。男女間賃金格差の要因となる管理職比率や平均継続勤務年数などの項目を定め、常時雇用する労働者が100人を超える一般事業主には、当該項目に関する状況把握、目標設定、一般事業主行動計画の策定及び情報公表を義務付けています。

令和4年7月から、公表項目に「男女の賃金の差異」が追加され、一般事業主のうち常時雇用する労働者の数が300人を超える場合には、必須の公表項目となりました。

公表時期は概ね、事業年度終了後3月以内となっております。令和5年3月に事業年度が終了した場合は令和5年6月までに公表する義務がある、ということです。

なお、情報公表を行わなかったことそのものに関する罰則は設けられていませんが、労働局が報告を求めたのにそれをせず、または虚偽の報告をした者は20万円以下の過料に処せられます。

 

男女の賃金の差異は、1事業年度の男性の平均年間賃金に対する女性の平均年間賃金の割合(%)です。「正規雇用」、「非正規雇用」、「全ての労働者」の3つの区分でそれぞれ算出、公表しなければなりません。また、雇用管理区分や賃金の定義や対象期間については明確に示さなければなりません。例えば賃金から除外された手当の名称や出向者の取扱い等がこれにあたります。数字のみでは読みとれない事情がある場合には、説明欄へ記載することで事業主の女性活躍推進の取組の実情や将来に対する姿勢を示すことができます。

 

さて、賃金の差異を算出することで得られるメリットはなんでしょうか。

既に実施している企業が、好事例として厚生労働省ホームページに掲載されていますので要点をご紹介します。

給与計算業務等のアウトソーシングを行っている企業ですが「賃金の差異」の算出をゴールとせず、賃金の差異はなぜ起こっているのか仮説をたてて検証しました。管理職における男女比率が影響していることがわかりますが、管理職に昇進するチャンスは性別にかかわるものではありません。そこで、そもそも管理職になりたい女性が少ないからではないか、と考え、キャリア開発プランといった仕組みの強化へと繋がりました。

また、結果を公表することでクライアントと腹を割った話ができ、様々なアイデアを共有することができました。透明化を歓迎する社内からの評判もよかったそうです。

 

男女の賃金の差異が大きいから男女間格差が大きいとは一概に言えませんし、逆に男女の賃金の差異が小さくても、管理職比率や平均継続勤務年数で男女間格差が生じていることもあるでしょう。男女の賃金の差異はあくまで有効な指標として活用し、要因の分析、従前の取組の点検、改善点の洗い出し等、女性活躍推進の取組を継続することが重要です。

 

 

 

社会保険労務士法人ユアサイド

綿引 文生(わたびき ふみお)

早稲田大学政治経済学部経済学科卒業後、平成19年に社会保険労務士試験に合格。平成21年社会保険労務士法人ユアサイドに入社。令和3年11月パートナー社員就任。派遣会社を含む幅広い業種の企業をこれまでに100社以上担当。人の強みを生かす企業経営の一助となるとの想いで、日々労務相談や手続きに対応している。

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