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2023年7月19日

賃上げに対する助成金

経団連は従業員500人以上の大手企業を対象に、今年の春闘での妥結状況などを調査し、1次集計として92社の結果を公表しました。それによると、月額賃金の引き上げ額は平均1万3,110円で、去年の1次集計を5,680円上回り、2年連続で増加しました。結果として今年の定期昇給とベースアップを合わせた大手92社の平均賃上げ率は3.91%と、去年と比べて1.64ポイント上昇し、1992年の4.78%以来、31年ぶりに高い水準となったことがわかりました。この賃上げの動きは中小企業にも波及しているようですが、大企業と比べて相対的に経営体力、価格転嫁力のない中小企業にとっては、賃上げのハードルは高いものとなります。

これを受けて賃上げに対する助成金が増加傾向にあると考えられます。「キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)」もそのひとつです。

令和4年12月から支給額が増額され、「1年度1事業所当たり1回」の申請制限から「1年度1事業所当たり100人」まで複数回申請できることになったのは大きな変更事項と言えます。

 

(概要)

有期雇用労働者等の賃金規定等を増額改訂し、昇給させた事業主に対して助成するものであり、有期雇用労働者等の処遇改善を通じたキャリアアップを目的としたものです。

基本給を3%以上増額改訂で1人当たり5万円、5%以上増額改訂で1人当たり6.5万円の助成金申請を行うことができます。(大企業においてはそれぞれ3.3万円、4.3万円)

また、職務評価を実施、活用して賃金規定等を増額改訂した場合、1事業所当たり20万円(大企業においては15万円)の助成額加算申請を行うことができます。

なお、賃金規定とは就業規則や労働協約において賃金額の定めがあるものです。所謂、賃金テーブル、職務や経験等によって区分される等級と、それに対応する賃金額が定められているものが対象となります。

 

(ポイント)

賃金規定を作成していない企業でも、新たに賃金規定を作成し、過去3カ月の賃金実態からみて3%以上の増額していることが確認できれば助成対象になります。また、職種別等の合理的な理由があれば、非正規社員の一部のみの賃上げに対しても助成金申請を行うことができます。

 

(申請スケジュール)

キャリアアップ計画書の作成・労働局への提出→計画書の認定→賃金規定等の増額改訂→増額改訂後の賃金で6カ月賃金支給→助成金支給申請

※増額改訂の日の前日から起算して3か月以上前の日から継続勤務し、支給申請日時点で会社都合の退職をしていない労働者が対象となります。

 

本助成金申請を行うにあたり「職種」、「職務」、「賃金」について改めて考える良い機会にもなると考えます。助成金申請のみをゴールとせず、得られたデータをより良い職場環境の形成に役立てたいところです。

 

 

 

社会保険労務士法人ユアサイド

綿引 文生(わたびき ふみお)

早稲田大学政治経済学部経済学科卒業後、平成19年に社会保険労務士試験に合格。平成21年社会保険労務士法人ユアサイドに入社。令和3年11月パートナー社員就任。派遣会社を含む幅広い業種の企業をこれまでに100社以上担当。人の強みを生かす企業経営の一助となるとの想いで、日々労務相談や手続きに対応している。

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