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2021年2月26日
2021年4月の労働者派遣法一部改正について
2020年10月9日に「労働者派遣法に係る省令・指針の改正」が発表され、2021年1月と4月に施行されます。今回は、4月に施行される改正について深堀りをしていきます。
1. 雇用安定措置について派遣スタッフの希望を聞くこと
雇用安定措置とは、派遣先にて一定の期間の就業が終了した後就職困難となるのを防ぐため、派遣元が一定の要件を満たす派遣スタッフ(登録者を含む)に対して、雇用を継続するための措置を講ずることをいいます。
措置は以下の4つです。
A 派遣先への直接雇用の依頼 B 新たな派遣先の提供(派遣スタッフの能力、経験などに照らし合理的なものに限る) C 派遣元による(派遣スタッフ以外としての)無期雇用 D その他安定した雇用の継続を図る為に必要な措置(雇用を継続したままの教育訓練、紹介予定派遣等) |
対象となる派遣スタッフについては以下に分けられています。
派遣スタッフの形態 |
A |
B |
C |
D |
同一の組織単位で継続して3年以上勤務する見込みのある者 |
◎ |
◎ |
◎ |
◎ |
同一の組織単位で継続した就業が1年以上3年未満の者 |
〇 |
〇 |
〇 |
〇 |
上記以外で派遣元に雇用された期間が通算して1年以上の者 |
× |
〇 |
〇 |
〇 |
◎…義務 〇…努力義務 ×…無し
今回、その措置を講ずるにあたって派遣スタッフの希望を聞き、それを「派遣元管理台帳」に記録することが義務となりました。
具体的な流れは以下の通りです。
①派遣元が派遣スタッフに対し、労働契約の更新時、または電子メール等により希望する措置の内容を聴取すること
→その際、上記AからDの内容を説明したうえでどの選択肢が最善策なのかを提案することは可能ですが、あくまでも決定権は派遣スタッフにあること、また特定の措置を希望するように示唆しないことが大切になります。
②聴取した日及び内容は、派遣元管理台帳に記録し、3年間保存すること
→台帳には、派遣スタッフに聴取した内容だけでなく派遣元がその後講じた措置についても記入する必要があります。具体的には、
『〇月△日、派遣スタッフAさんに対し希望を聞いた』/『〇月☆日、派遣先へ直接交渉の依頼を行った』等、単純明快に記録することです。
なお、雇用安定措置義務を逃れるために、意図的に雇用契約期間を狭めたりしてスタッフに不利益となる策を講じた場合、義務違反と同視され、行政の指導等の対象となりますので、絶対にしないようにしましょう。
2. マージン率等のインターネットでの情報開示の原則化
派遣元は、今まではマージン率以外はインターネット以外にも書面その他事業所の備え付けの方法によって情報を開示することが可能だったのですが、インターネットの公開率が全体の2割程度となっていたため、常時インターネットの利用その他の適切な方法(事業所への書類の備え付けやパンフレットの作成)により情報提供が原則となりました。なお、この情報提供の目的は関係者、とりわけ派遣スタッフ(登録者・志願者も含む)に必要な情報を提供するためです。
情報提供すべき事項 1 派遣スタッフの数 2 労働者派遣の役務の提供を受けた者の数 3 労働者派遣に関する料金の額の平均額 4 派遣スタッフの賃金の額の平均額 5 マージン率 6 派遣スタッフのキャリア形成支援制度に関する事項 7 派遣スタッフの待遇決定方式を労使協定方式としているか否かの別等 |
マージン率とは、「派遣料金から派遣スタッフへの賃金を引いた金額の割合を表すもの」で、以下の計算式で求められます。
【マージン率】=(派遣料金の平均額-派遣社員の平均賃金)/派遣料金の平均額
マージン率が高いほど派遣スタッフに支払う賃金以外の諸経費が高いことになり、反対にマージン率が低いほど派遣スタッフに支払う賃金以外の諸経費の割合は小さいということになります。
なお、会社のホームページが無い場合においては人材サービス総合サイトにてマージン率等の情報を開示する必要があります。
昨今の新型コロナウイルスの影響にて、いわゆる『雇止め』が増加傾向にあり、2021年1月現在で全国で8万人を超えていると厚生労働省は発表しました。そうした中での労働者派遣法の改正のため、派遣スタッフはもとより、再就職先を探している人にとっても正しい情報提供を受けることが、新たな再就職活動の一歩になるのではないかと感じます。2021年4月に施行されるため今から改正に向けた準備をし、労使双方を守っていくことが派遣元にとって大切になります。

社会保険労務士法人ユアサイド
工藤 あさみ(くどう あさみ)
早稲田大学 第二文学部卒業後、平成27年社会保険労務士法人ユアサイド入職。平成29年社労士試験合格、登録。派遣会社での労務管理経験を活かし、労務相談等を行う。「親しみのある社労士」を目指して日々邁進中。