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2021年4月19日

職業紹介事業者に対する「就職祝い金」による求職勧奨が禁止されます。

厚生労働省は令和3年4月1日から職業安定法に基づく指針〔第5の9関係〕を一部改正し、「就職祝い金」などの名目で職業紹介事業者が求職者に対し、社会通念上相当と認められる程度を超えた金銭等を提供して、求職の申し込みの勧奨を行うことを禁止しました。

 

以前より、一部の悪質な職業紹介事業者が紹介手数料収入を増やすため、就職祝い金を利用して紹介件数を稼いでいるケースがありました。特に人手不足の医療・介護・保育関連の求人に関しては人員の確保が最優先のため、そこに目を付けた事業者が度々就職祝い金付きの職業紹介を行い、さらには自らの紹介により就職した労働者に対し転職勧奨を行って故意に退職、就職を繰り返すよう促していた事例も見られるようです。

 

上記方法で職業紹介を行う事業者は、職業安定法に基づき事業を運営しているにも関わらず、「労働力の需要供給の適正かつ円滑な調整に果たすべき役割」を全うせず、「各人の有する能力に適合する職業に就く機会を与え」「雇用の安定を図る」という法の趣旨から逸脱した行為を行っている恐れがあると言えます。

実際、丁寧なマッチングが行われなかった結果、求人企業は人材が定着せず、採用コストが嵩み、求職者側は一時金の臨時収入はあったとしても、職の安定が損なわれているわけですから、得をしているのは悪質な事業者のみです。また、求人者にとって、「就職祝い金」は数万円と高額な設定も多く、応募企業に偏りが生じることも求人・求職者双方にとってデメリットが生じていたものと思われます。

 

このようなことから、厚生労働省は、職業紹介事業者に対し、「就職祝い金」の禁止とともに、労働者の早期離職を防ぐため、下記事項を遵守するよう求めています。

■求職の申し込みの勧奨は、金銭の提供ではなく、職業紹介事業の質を向上させ、それをPRすることで行うこと。

■自らの紹介により就職した者(無期雇用契約に限る)に対して、就職した日から2年間は、転職の勧奨を行わないこと。

■ 紹介手数料に関して、返戻金制度を設けること(が望ましい。)

■ 求職者と求人者の双方に対し、求職者から徴収する手数料および求人者から徴収する手数料の両方を明示すること。

特に現在、コロナ離職が増えている中、生活に困窮している求職者も多いと思われますので、指針の改正を以て、適正に需給が調整されることを期待したいと思います。

 

 

 

社会保険労務士法人ユアサイド

工藤 あさみ(くどう あさみ)

早稲田大学 第二文学部卒業後、平成27年社会保険労務士法人ユアサイド入職。平成29年社労士試験合格、登録。派遣会社での労務管理経験を活かし、労務相談等を行う。「親しみのある社労士」を目指して日々邁進中。

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