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2023年1月19日

勤務間インターバル

働き方改革関連法が2018年6月に成立して4年半が経ちます。成立した内容は大きく注目されたところで言えば、時間外労働の上限規制(大企業2019年4月、中小企業2020年4月)、年休5日取得義務(2019年4月)、同一労働同一賃金関連(大企業&派遣2020年4月、中小企業2021年4月)、中小企業法定時間外60時間超割増率50%(2023年4月)などとなっております。その多くが2022年までに施行され、時間外上限規制の一部業種・職種に対する猶予措置を除けば、中小企業の割増賃金率見直しを残すのみとなっています。

 

今回はこの働き方改革関連法のうち、努力義務となっている勤務間インターバルの導入について紹介をしていきます。勤務間インターバルは導入が義務的に強制されているものではありません。義務的内容の注目は当然大きくなる一方、こちらは努力義務です。だからといって事業主として全く何の対応もする必要がないということにはならないと考えています。少なくとも勤務間インターバルとはどういうものか、ということについては理解しておくことは必要だと言えるのではないでしょうか。

 

1.勤務間インターバルとは

勤務間インターバルとは、終業時刻のあと、次の始業時刻が始まるまでの間の時間数を一定以上確保する制度です。このインターバル時間のことを、休息時間と呼ぶこともあります。

当然ながら、この場合の終業時刻は時間外労働も含めた終業時刻であり、就業規則等で定める所定の終業時刻ではなく実際の終業時刻を指します。始業時刻についても、所定の始業時刻ではなく、早出勤務をさせる場合はそれが開始となる実際の始業時刻のことを指します。

 

2.導入のメリット

一つには、従業員の健康維持向上に資するということです。これにより健康状態の悪化によるパフォーマンス低下の可能性を下げることができると思われます。

さらにもう一つとして時間外労働上限規制への対応の他、中小企業においては2023年4月より開始される割増賃金率の見直しへの対応策の一つとして検討することができます。仕事のパターンとして残業をしてしまいがちな従業員がいるようであれば、働き方の見直しをきっかけに生産性向上をさせる効果も期待できます。

 

3.導入する場合に検討すること

・インターバル(休息時間)の時間数

休息時間の時間数は、概ね9時間~11時間と設定されることが多いようです。ただし、必ずしもこの範囲に収まる必要はありません。厚生労働省などで公開されている事例を参考にして、自社の業務内容や導入目的に適合する時間数を設定することが肝要です。

・除外設定

どうしても休息時間の確保を行えないとき、というものを設定しておくこともお勧めします。例としては通常予見できない特別の都合による場合です。円滑な制度運用を行うためには必要と言えます。

・休息時間が次の始業時刻に食い込む場合の対応

前日の終業時刻が遅くなり、休息時間を確保すると次の日の所定始業時刻を過ぎてしまうという場合の対応についてどのようにするかを予め設定しておきます。例としては「単に始業時刻を繰り下げて、所定の終業時刻を変えない」「所定の始業時刻及び終業時刻をずらす」などの対応があります。

・勤怠管理の方法

休息時間が確実に確保できているかどうかを(リアルタイムで)確認する必要があることや、上記の通り食い込む場合の対応などを改めて設ける必要があるということは、勤怠管理方法を見直さなければならないということでもあります。必要であれば、勤怠システムの導入も検討します。

 

4.まとめ

勤務間インターバルは、前日の終業時刻から次の日の始業時刻までの間の休息時間を確保する制度で、働き方改革関連法のひとつである労働時間設定改善法により2019年4月から導入が努力義務となっています。まだ対応を取れていない場合、まずはどのようなものかを確認するところから始めることがお勧めです。

また勤務間インターバル制度自体、一定の規格を持っているものではありません。導入を検討される場合、ある程度自由に設定することができますので、顧問社労士に相談する、厚生労働省の特設サイトで公開されている事例などを参考にするなどしていただくのが良いかと思います。

 

 

 

社会保険労務士法人ユアサイド

綿引 文生(わたびき ふみお)

早稲田大学政治経済学部経済学科卒業後、平成19年に社会保険労務士試験に合格。平成21年社会保険労務士法人ユアサイドに入社。令和3年11月パートナー社員就任。派遣会社を含む幅広い業種の企業をこれまでに100社以上担当。人の強みを生かす企業経営の一助となるとの想いで、日々労務相談や手続きに対応している。

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