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2023年5月18日

新型コロナウイルス感染症5類移行による労災保険への影響

新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけが、ゴールデンウイーク明け2023年5月8日より5類に移行しました。

 

5類移行後に関しても感染経路が特定できない場合に労災に該当するか否かの判断基準については、これまでの基準を維持し、変更は行われません。

従って、患者等に接触する等の機会のある医療従事者、介護従事者等は感染経路が業務外であることが明らかな場合を除き、労災給付の対象となる取り扱いが継続されます。

また、複数の感染者が確認された労働環境下、顧客等との近接・接触機会が多い労働環境下においても、個々の状況次第ではありますが、労災給付認定の可能性が高いという取り扱いも継続します。

休業補償給付請求の際、医師等の証明をPCR等の陽性結果が確認できる書類等で代用できる扱いについても変更はありませんが、この取り扱いは医療機関がひっ迫していた等の事情があり、その負担の軽減を目的とした臨時的取り扱いとして行われていた面があります(基補発 0902 第1号)。

このため、今後は医療機関のひっ迫の程度により証明書が必要な通常対応への変更がなされる可能性もありますので、都度ご確認の上で適切な対応をして頂ければと思います。

 

5類移行にあたっての変更点として、通常の労災給付と同じ扱いとなり、労災保険のメリット制を受けます。この制度は、保険料の額に対する保険給付の額の割合に応じて保険料が増減する制度となっております。事業所規模その他やその請求件数、給付内容等によって、労災保険料に影響を与える恐れがあるという事です。

 

これまでは労災保険料に影響を与えない特例を設けていましたが、労災保険料に影響が出るとなると事業者としては労災に該当するかどうか、給付請求を行うかどうかを慎重に判断してから手続きを行いたくなるものと思います。(※実際の請求件数をみると令和5年3月末時点で新型コロナに関する労災請求は19万件程度もの請求(うち7割程度は医療従事者等の請求)があったようです)

そうすると、事業者はコロナによる労災について労働者死傷病報告を提出が義務であり、これを怠ると「労災かくし」(罰則あり)を疑われます。すなわち、労災保険料が上がることを忌避するあまり、今後は「労災ではない」と事業者側だけで判断して処理を進めてしまうことは問題であると考えられるところです。

ただし今後も、労災認定を取り巻く状況は時間とともに変化していくことが考えられます。その都度、基準に照らし適切な処理を行っていただければと思います。また、労働者からの労災の給付請求や労災認定の主体は事業者ではありません。その為、労働者からの請求があった場合は申請をすることはもちろんのこと、処理に迷う場合は、管轄の労働基準監督署等に相談するなどしていただくのがよいところです。

 

 

 

社会保険労務士法人ユアサイド

綿引 文生(わたびき ふみお)

早稲田大学政治経済学部経済学科卒業後、平成19年に社会保険労務士試験に合格。平成21年社会保険労務士法人ユアサイドに入社。令和3年11月パートナー社員就任。派遣会社を含む幅広い業種の企業をこれまでに100社以上担当。人の強みを生かす企業経営の一助となるとの想いで、日々労務相談や手続きに対応している。

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