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2024年8月29日

労働基準法上の管理責任について

2024年4月より時間外労働の上限規制が「工作物の建設の事業」、「自動車運転の業務」、「医業に従事する医師」に適用されました。今回は、それを踏まえ今一度、時間外・休日労働についての解説と派遣労働者の場合は、労働基準法上の管理は派遣元、派遣先どちらに適用されるものなのか等ご説明していきます。

まず、法定労働時間を超える時間外・休日労働は原則禁止とされております。しかし、労使の協定(36協定)を締結し、所轄の労働基準監督署に届出をすることにより時間外・休日労働が可能になるというものになります。
この届出を行うと、1か月に45時間かつ1年360時間(休日労働除く)行うことが可能となります。(1年変形労働時間制の場合、1か月に42時間かつ1年320時間。)

また、上記に掲げるもののほか、当該事業場における通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い臨時的に限度時間を超えて労働させる必要がある場合において、1か月について労働時間を延長して労働させることのできる時間が休日労働含め100時間未満となります。1年について労働時間を延長して労働させることができる時間は休日労働含め720時間を超えない範囲にて定めることができます。これを特別条項といいます。
特別条項の届出をすれば、限度時間までは時間外をすることが出来るわけではなく、月100時間未満、2ヶ月から6ヶ月平均80時間以内でなければなりません。また、時間外労働が月45時間を超える事が年6ヶ月が限度となりますので、あわせてご注意下さい。

そして、派遣労働者がこの時間外労働・休日労働を行った際に、派遣元・派遣先どちらに管理責任が及ぶかについて解説致します。
36協定の届出・割増賃金の支払い義務ともに「派遣元」が管理責任を負う事になります。もちろん、働いている派遣先にも一部管理責任を負う部分があり、「労働時間・休憩・休日等の労働者の具体的就業に関する事項」がこれにあたります。

過去に派遣先を違法残業で送検するという事案がありました。派遣元の36協定を超えて派遣労働者を働かせたとして、派遣先の食品製造・販売会社を労働基準法違反の疑いで書類送検したというものです。1ヶ月最大100時間を上回る長時間労働で派遣元の延長限度時間を知っていたにも関わらず人員を追加せず時間外労働を増やして対応していたそうです。
本来派遣先が時間外労働に従事させることができるのは「派遣元」の36協定が定める延長限度の範囲内となります。その為、前述した事案は、派遣先を使用者とみなして処分されました。

今回は、時間外・休日労働についてのご説明と派遣労働者の場合、時間外・休日労働をした場合にその労働基準法上の管理責任はどうなるのかご説明させて頂きました。
これを機に今一度、社内で労働基準法の管理責任に誤りがないかご確認頂ければ幸いです。

 

 

 

社会保険労務士法人ユアサイド

綿引 文生(わたびき ふみお)

早稲田大学政治経済学部経済学科卒業後、平成19年に社会保険労務士試験に合格。平成21年社会保険労務士法人ユアサイドに入社。令和3年11月パートナー社員就任。派遣会社を含む幅広い業種の企業をこれまでに100社以上担当。人の強みを生かす企業経営の一助となるとの想いで、日々労務相談や手続きに対応している。

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