HuApp MEDIA
働くすべての人に役立つ情報を配信します。
シフト制により就業する労働者の年次有給休暇留意事項改正について
これまでシフト制で働く労働者を使用する事業主については、月によって働く日数が固定されていないことを理由に、年次有給休暇を何日付与すれば良いのか、賃金をいくら支払えば良いのかという実務上の問題がありました。2026年6月より、厚生労働省はシフト制により就業する労働者の留意事項を改正し、シフト制労働者の年次有給休暇の付与日数算定ルールや取得時の運用を明確化しました。改正により、「あらかじめ所定労働日数を定めていないことを理由に年次有給休暇を付与しないことは認められない」と明記がされました。労働者ごとに何日分の付与日数、賃金を与えるべきかを正確に把握する必要があります。
1.本留意事項におけるシフト制
ここでいうシフト制とは、労働契約の締結時点では具体的な労働日や労働時間を定めず、1週間や1ケ月ごとに作成される勤務シフト表などで初めて具体的に確定するような勤務形態をいい、三交替制のようなあらかじめ決められた勤務形態で働くようなものは除きます。勤務シフト表が作成されている場合、パートやアルバイトの他、契約社員や正社員にも適用されます。
2. 年次有給休暇の適切な付与日数の把握
シフト制の労働者であっても、雇い入れの日から起算して6か月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した場合は、通常通りの年次有給休暇を付与しなければなりません。契約期間が6か月未満である場合も、契約が更新されて6か月以上に及んでいる場合は6か月継続勤務の要件を満たすことになります。
所定労働日数が少ない労働者についても、所定労働日数に応じた日数分の年次有給休暇を与える必要があります。単にシフト制で働いていることを理由に通常通りの付与をしない、勤務日数が毎月変動する為有給管理をしないということは適切な対応ではありません。
また、8割以上出勤していない労働者に対して、任意に年次有給休暇を付与することは差し支えないとあわせて明記されています。
3.所定労働日数を算出しがたい場合
「あらかじめ所定労働日数を定めていないことを理由に年次有給休暇を付与しないことは認められない」と明示がされましたが、その上で所定労働日数を算出しがたい場合には、目安となる労働日数により算出をした付与日数が、実績により算出した付与日数を上回る場合は目安となる労働日数を用いてよいとされています。実績と目安を比較し、日数が多い方を採用する形です。また、使用者側の都合で一方的に日数を増減させることは認められません。
・雇い入れ6か月経過後の年次有給休暇の付与:雇い入れから6か月間の労働日数の実績を2倍した日数
・雇い入れ1年6か月経過後以降の年次有給休暇の付与:前年の労働日数の実績
例:入社から6か月間の実際の労働日数が80日の場合
80日×2倍=1年間の所定労働日数160日とみなします。
比例付与の所定労働日数121日から168日に当てはまるため、付与日数は5日となります。
4.取得日に支払うべき賃金の明確化
改正後の留意事項として、「所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金」をあらかじめ就業規則等で定めた場合の具体的な計算方法が明示されました。改正により、有給を使用しても最低限の賃金しか支払われないといった不利益の解消が図られます。
・時給者の場合:時給×年次有給休暇取得日における所定労働時間として定められている労働時間を乗じた額
例:その日のシフトが6時間の場合は6時間分、8時間の場合は8時間分を支払う必要があります。
・日給者の場合:日給額
まとめ
改正により新たな法定義務が生じたわけではなく、所定労働日数を算出できないシフト制の労働者について、年次有給休暇の付与日数を何日与えるべきかなどという判断基準が明確になったものです。留意事項を踏まえ、適切な雇用管理を行うことが求められます。
社会保険労務士法人ユアサイド
綿引 文生(わたびき ふみお)
早稲田大学政治経済学部経済学科卒業後、平成19年に社会保険労務士試験に合格。平成21年社会保険労務士法人ユアサイドに入社。令和3年11月パートナー社員就任。派遣会社を含む幅広い業種の企業をこれまでに100社以上担当。人の強みを生かす企業経営の一助となるとの想いで、日々労務相談や手続きに対応している。